持続可能な社会の実現に向けた技術開発
方針・基本的な考え方
【TAISEI VISION 2030】達成計画では、経営の基本方針の一つとして、取り組むべき技術領域を4つの領域(社会・環境課題、社会基盤強化、地方創生、フロンティア対応)に特化して、時間軸や目標とする成果リターンを明確にして技術開発を推進しています。
リスクと機会
持続可能な社会の実現に向けた技術開発への取り組みが十分でない場合、顧客のニーズを満たす高品質で性能に優れた建設生産物や関連サービスを提供できなくなるリスクが生じます。
一方で、イノベーションを追求して新しい事業や市場を創出するための技術や、様々なサステナビリティ課題の解決につながる技術、品質・生産性・安全性の向上に資する技術の開発及び社会実装の促進は、グループの競争優位性を確保し、企業価値向上やステークホルダーからの評価向上に寄与します。
ポリシー/コミットメント
- グループ行動指針: 価値創造への挑戦、社会的責任の遂行
- 知的財産に関する方針
- 技術開発方針
- デジタルトランスフォーメーション(DX)方針
- 【TAISEI VISION 2030】達成計画 経営の基本方針 技術開発
目標
KPI
- KPIについては、マテリアリティをご覧ください。
実績
特許出願数
- 2023年度における特許出願件数は282件でした。
- 産業の発達に寄与するため、知的財産を重視した経営を推進し、特許権のほか、著作権や施工・業務上のノウハウなど知的財産全般について、戦略的な管理・活用を実行しています。
- 知的財産戦略に基づき積極的な権利化・活用を行うことにより、当社の特許査定率は87.1%となっており、全業種特許査定率(特許行政年次報告書2023年版における過去3年間の平均値)75.0%に対して、高い数値となっています。
- 新しい価値の知的財産化を図り、事業戦略、研究開発戦略、知的財産戦略との三位一体により新技術の開発や作業所の技術支援、知的財産の活用などを通じて社会に貢献していきます。
ZEB建築件数
- 今後の成長市場として期待できる分野として、ZEB/ZEFの進化・普及に全力で取り組んでいます。お客様に自然エネルギーなど脱炭素の取り組みについてご理解いただき、2023年度のZEB化建物受注件数は19件となりました。
イニシアチブ
- (一社)日本知的財産協会
体制・システム
イノベーション実現に向けて
中長期的な企業価値の向上のためには、革新的な価値創造(イノベーション)への取り組みが不可欠です。大成建設グループは、「人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献する」ことを使命とし、【TAISEI VISION 2030】達成計画 経営の基本方針 技術開発に、「当社が取り組むべき技術領域を4つの領域(社会・環境問題、社会基盤強化、地方創生、フロンティア対応)に特定し、個別プロジェクトだけでなく、生産性向上、生産プロセス革新への対応を特に注力する領域として取り組むこと」を定め、「顧客の期待を超える付加価値の創造」、「働き方の革新の実現による全社員のエンゲージメント向上」に貢献し、「進化し続けるThe CDE3カンパニー」を強力にバックアップしてレジリエント社会を実現することを目指しています。
中期経営計画においては、3年間で集中的に取り組むべきイノベーション活動に関して、事業関連だけでなく、技術開発、情報、設備・人財関連も含めた投資計画を取締役会で決議の上、取り組んでいます。これら分野ごとの投資計画については、年度ごとに具体的な実施計画を策定の上、その進捗状況を経営会議及び取締役会でモニタリングすることにより実効性を高めています。
また、当社グループの競争優位性の源泉となる「技術開発」については、技術センターが中心となり、研究開発だけでなく、研究成果の実装化を図っています。革新的な技術開発を推進するための諸施策の検討・立案にあたっては、社長を委員長、技術センターを幹事とする「技術委員会」(経営会議の諮問機関である業務委員会)において、土木・建築他の注力事業や営業他の関係本部長により審議し、経営会議及び取締役会に上程の上、推進しています。
更に、当社グループ自らの技術開発に加え、既存のバリューチェーンにとらわれない異業種との共同研究や地域社会との連携を推進しています。異業種との共同研究については技術センターが、地域連携についてはサステナビリティ総本部内に設けた専門部署が中心となり取り組みを進めています。将来のバリューチェーンの革新も視野に入れて、今後も、志を共有・共感できるステークホルダーとの生産的な関係を深め、長期的・持続的な価値創造の基盤の強化を図っていきます。
知的財産戦略
大成建設は、「知的財産に関する方針」に則り知的財産戦略を実践しています。知的財産を重視した経営を推進し、特許権のほか、著作権や施⼯・業務上のノウハウなど知的財産全般について、戦略的な管理・活用を実⾏し、管理については、特許を管理するデータベースの整備や、保有特許検索システムを構築し、業務効率の向上を図っています。
また、企業経営に重大な影響を与える権利の侵害や被侵害、技術流出等の知的財産リスクを、予防、軽減するために、あらゆるビジネスプロセスにおいてリスクマネジメントを徹底しており、「知的財産情報取扱規程」に基づいた機密管理を徹底するとともに、技術部門や事業部門に対し、他社の特許情報を周知するなど、第三者の知的財産権を侵害するリスクの低減対策をとっています。
取り組み
研究開発活動事例
大成建設グループは、技術開発のために経営資源を戦略的に投入しています。具体的には「洋上風力産業」、「物流・人流・土木インフラ産業」、「カーボンリサイクル産業」、「住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業」、「ライフスタイル関連産業」、「水素産業」、「原子力産業」、「食料・農林水産業」、「資源循環関連産業」の各分野において新技術の開発や効率化、低コスト化を推進しています。また、「大型プロジェクト対応の特殊技術」、「高付加価値化・高品質化に資する技術」の開発も進めています。
研究開発活動の実施に際して、技術ニーズの高度化・多様化に対応し、技術開発への投資効率を高めるべく、大学をはじめとした研究機関、異業種企業、同業他社などとの社外アライアンスやオープン・イノベーション活動を積極的に推進しています。
オープン・イノベーション:組織の枠組みを超え、広く知識・技術の結集を図る等のイノベーションの方法論。
知的財産力の向上に向けて
特許法の第一条(目的)には「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする」とあります。当社は、優位性を確保するだけではなく、産業の発達に寄与するという目的達成のため、知的財産を重視した経営を推進し、特許権のほか、著作権や施工・業務上のノウハウなど知的財産全般について、戦略的な管理・活用を実行しています。
また知的財産に関する制度整備や情報交換等をグループ全体で実施し、グループ全体としての知的財産力の向上を図るほか、競争力の強化と企業価値の向上を目的に、社員に知的財産に関する方針を周知徹底し、知的財産を戦略的に活用するための研修を毎年実施しています。2023年度は、グループ会社、⼤成建設の本社技術部門、⽀店現業部門に向けた知的財産講座や全役職員を対象としたeラーニングを行い、出願権利活用、侵害に係る⼀連の啓発活動を実施しました。
ZEB性能の向上に向けて
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、建築計画の工夫による日射遮蔽・自然エネルギーの利用、高断熱化、高効率化によって大幅な省エネルギーを実現した上で、太陽光発電等によってエネルギーを創り、年間に消費するエネルギー量を大幅に削減する最先端の建築物です。ZEBを実現・普及することにより、エネルギー需給構造を抜本的に改善することが期待されています。中期経営計画(2024-2026)の重点課題にも、ZEB性能の向上を掲げており、SDGs達成にもつながる取り組みとして注力しています。
更に、ZEB及びZEF(net Zero Energy Factory)の展開、グリーン・リニューアルZEBの取り組みの推進、建物の調達段階・施工段階・運用段階のライフサイクル全体に渡って排出されるCO2をトータルの収支でゼロにする「T-ZCB®(ゼロカーボンビル)」の推進(当社グループ施設において日本初の実証を目指す)等に取り組んでいます。
大成建設のデジタルトランスフォーメーション
大成建設は、【TAISEI VISION 2030】達成計画 事業変革の進め方 DXにおいて、「情報(デジタル技術とデータ)をスピーディに活用することにより、当社グループの企業価値の向上を図る」を掲げ、全社を挙げてDXに取り組んでいます。この活動が経済産業省の定める認定基準を満たしたことにより、DX認定を取得しました。
今後も引き続き、中長期的に目指す姿【TAISEI VISION 2030】「進化し続けるThe CDE3 カンパニー~人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献する先駆的な企業グループ」を目指し、活動を加速していきます。
データ
研究開発費の推移(連結)
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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研究開発費 | 135億円 | 142億円 | 152億円 | 168億円 | 186億円 |