品質の確保と技術の向上
方針・基本的な考え方
大成建設は、「品質方針」において、顧客や社会に対し、高品質の建設生産物・関連サービスを効率的かつ継続的に提供することを重要な使命と定めており、各部門(建築部門・土木部門・設計部門・エンジニアリング部門・原子力部門)では個別方針を定め、生産活動を効率的に推進しています。各部門やグループ会社ごとに、ISO9001の認証を受け、品質マネジメントを実施し、土木部門・建築部門等それぞれでマニュアルや実施要領を作成しています。関係各部門とも連携して適正な品質管理を徹底し、品質に起因する不具合撲滅に努め、引き渡し後にお客様満足度調査を実施し、お客様とのより良い関係づくりに注力しています。
リスクと機会
品質確保への取り組みが十分でない場合、品質不良・不具合発生による顧客の健康・安全の侵害や資産価値の毀損といったリスクが生じ、また、手戻りや手直しに伴うコスト増加・生産性低下リスクが生じます。さらに、少子高齢化に伴う熟練技術者の減少や労働人口の減少によって要員不足となり品質管理が行き届かなくなるリスク等があります。
一方で、自動化やロボットの活用等の新たな技術開発やデジタル技術の活用による品質管理能力と生産性の向上は、グループの競争優位性を確保し、企業価値向上やステークホルダーからの評価向上に寄与します。
ポリシー/コミットメント
- グループ行動指針:お客様満足の追求、安全性・品質の確保と向上
- 品質方針
- 【TAISEI VISION 2030】達成計画 事業基盤の整備方針 品質
目標
KPI
- KPIについては、マテリアリティをご覧ください。
実績
お客様満足度
建築部門
- アンケート形式で実施しており、出来栄えや使い勝手・施工中の作業所運営の評価など、5段階評価となっています。2023年度の満足度は、82.8%となりました。
- 評価の低い項目については、要因を分析し、対策を立て工事反省会等で共有し、改善に努め、お客様とのより良い関係づくりに注力していきます。
土木部門
- 発注者の工事評定点を基に算出しており、2023年度の満足度は、98.6%となりました。
- これに加えてCSインタビューも実施しており、各支店は結果を工事反省会で共有し、改善に努め、今後も本社・支店が一体になり、さらなるお客様満足度向上を目指していきます。
生産性(一人当たり売上高)
技術の向上の成果を図る指標の一つとして、一人当たり生産性(売上高/従業員数)を指標としています。成果を見える化し、従業員一人ひとりの「生産性」に関する意識の向上を図ることで、業務プロセスを見直し、グループ会社一体となって、生産性の向上に努めています。2023年度の生産性は、0.70億円となりました。
イニシアチブ
- ISO9001
体制・システム
実効性のある体制へ
2022年度に発生した鉄骨建方等の精度不良を踏まえ、二度と同様の事態を起こさないよう、全社をあげて品質管理プロセスを確実に機能させる仕組みの強化等の再発防止策に取り組んでいます。役職員全員が「TAISEI QUALITY~品質は私たちのプライド~」という原点に立ち返り、基本を徹底してまいります。
そのための施策の一つとして、建築事業に関する品質管理プロセスを徹底するため、建築部門から独立した社長直轄の品質管理本部を新設しました。同本部は、品質管理の統括や指導に特化して、施工時の品質トラブルを予防し、顧客の要求や契約に合致した円滑な施工につなげる役割を担っており、施工時や、竣工後に品質上の問題があった場合、同本部が専門組織として統括・指導を行います。
具体的には、本社品質パトロール及び中間・完成検査において「建築業務標準」に則り品質管理プロセスの実施状況を第三者の視点で判断します。品質管理プロセスに合致しない施工や現地での指摘事項に対しては、作業所長に期限を明確に定めて修正・是正を指示し、その確認を実施するほか、修正・是正がなされていない場合は、支店に工事停止を命じ修正・是正を確実に実施します。
さらに、支店技術部・室の業務内容について定期的に審査を行い、品質管理プロセスの有効性維持について支援・指導をするとともに、作業所及び支店品質管理専任者に対する支援・指導も実施します。
*TAISEI QUALITY:
大成建設グループ全体の品質推進活動を、一言で表したスローガンです。大成建設グループの社員がプライドを持って、品質の確保に努めることで、お客様や社会から信頼を得ることを目指しています。
各部門の品質方針
建築部門
ISO9001・2015年版の改定を機に、『建築業務標準』を品質管理マニュアルに相当するものと位置付け、それに沿った業務フローを実施することによる品質管理を推進しています。
部門の品質方針において、顧客や社会の要求に合致した「高品質の建設生産物・関連サービス」を継続的に提供し、顧客の満足と信頼を得ると定め、お客様とのより良い関係づくりに注力しています。
土木部門
お客様のニーズに基づき優れた品質の土木構造物を提供するため、総合建設業としての知恵と組織力を結集し、工事関係者全員の誠実かつ迅速な協働により、お客様に満足していただける品質とサービスを追求しています。
さらなる「お客様満足の向上」のため、品質マネジメントシステムについても有効性を継続的に改善し、より効果的な運用を目指します。
エンジニアリング部門
大成建設のエンジニアリング部門は、日本の総合建設会社として初めて1968年に設立され、50年を超える業界随一の歴史と実績を誇ります。また、1996年に社内で最初にISO9001の認証を得るなど、長年にわたり品質活動に取り組み、顧客ニーズの実現と多くの信頼を築いてきました。2020年には、建築部門、設計部門等と同じ認証機関へ移転し、企画・計画から設計・施工まで一貫して対応する部門として更に躍進を続けます。
顧客満足の実現に向け、当社の品質方針のもと、「拡大するエンジニアリング事業領域において次世代の先進的なサービスを通じて『TAISEI QUALITY』を提供する」を部門の品質方針として掲げ、以下の具体的な行動指針を下記に定め品質活動に取り組んでいます。
- 顧客要求事項を的確に捉え解決する
- 先進的なサービスを提供できる人財を育成する
- 法令・規制などを遵守する
- 品質マネジメントシステムを適切に運用し、継続的に維持・管理する
設計部門
ISO9001認証を設計本部と支店設計部(8支店)一体で取得し、全国どの部署においても高い設計品質を確保する仕組みを運用しています。また、2016年に大成建設工事監理一級建築士事務所を開設し、独立した権限をもって工事監理を行っています。
昨今ICT化が急速に進み働き方も変わってきており、それに伴う新たなリスクも生じ、システムの見直しも必要になっています。設計部門は2002年6月に建設業界で世界初の情報セキュリティマネジメントシステム認証(当時BS7799、現在ISO27001)を取得しており、品質、環境、情報セキュリティのISOの活動を通じて総合的に品質向上に取り組んでいます。
原子力部門
大成建設の品質方針のもとに、原子力関連施設の設計、調査・研究開発、実証試験及び技術支援を通じて、お客様満足の向上を図るとともに、原子力関連施設の安全性、信頼性及び環境保全に資することを品質方針としています。
必要に応じて「原子力安全のためのマネジメントシステム規程JEAC4111」[(一社)日本電気協会]、「原子力施設における許認可申請等に係る解析業務の品質向上ガイドライン」[(一社)原子力安全推進協会]、「原子力施設のための品質保証要求事項NQA-1」[ASME:米国機械学会]等にも対応し、電力会社をはじめとするお客様個別の品質保証要求に対応しています。
取り組み
生産性向上への取り組み
大成建設では、作業所の生産性向上に向けて様々な施策を実施しています。計画・設計・施工・運用で得る情報を管理するT-CIM®やBIMをはじめ、生産能力の向上を実現する最も効率的な施策としてICT基盤を最大限に活用しています。
建築部門では、本部にデジタルプロダクトセンター、及び作業所業務推進センターを設置し、支援体制を拡充しており、作業所業務の分業化と効率化を図っています。また、設計標準図の再整備や作業所入場時の顔認証システムの展開等、業務内容やフローを根本から見直す業務改善を実施しています。
土木部門では、デジタルデータを活用した施工管理システム「T-iDigital Field®」搭載のアプリケーションの適用を拡大して工期・安全等の生産能力の向上を支援しています。また、無人化・省力化技術の現場試行・連携検証の実施や、作業所業務の集約・効率化を進めています。
お客様に最適なサービス・ソリューションを提供するとともに、一人当たりの生産性(売上高/従業員数)の指標で、成果を見える化し、従業員一人ひとりに「生産性」についての意識の向上を図ることで、業務プロセスを見直し、グループ一体となって、生産性の向上に努めていきます。
T-CIM®:情報通信技術CIM(Construction Information Modeling)を活用した施工システムと、各工事の3次元モデルに関連する属性情報を紐づけて統合した当社独自のシステムです。
BIM:Building Information Modelingの略で、コンピューター上に構築した3D建物モデルに建築部材や設備機器の仕様や配置、コストなどの属性情報を紐づけた建築情報データベースです。
T-CIM®を用いた生産システムの革新(土木部門)
土木部門では、建設現場の生産性と品質向上を目指したT-CIM®システムの開発を2014年より行ってきました。
国土交通省が2012年より提唱しているCIM(Construction Information Modeling/Management)は、3次元モデルに部材仕様などの属性情報を紐づけたものですが、当社のT-CIM®では3次元モデルを必須としていないのが大きな特徴です。T-CIM®には、一般的なコンクリート工事を支援するシステム T-CIM®/Concreteと専門工種を支援するシステムT-CIM®/Tunnel(トンネル)のほか、土工、ダム、シールド、橋梁、鉄道、海洋、土壌浄化などの専門工種別のT-CIM®があります。いずれも、出来形や品質の情報に加え進捗情報などをクラウドでどこからでも確認することができるシステムです。
このうちT-CIM®/Concreteは、生コンの練混ぜから打込みまでの情報をインターネット上のクラウドで管理し、その状況をリアルタイムに閲覧することが出来るシステムで、土木現場のみならず建築現場にも展開が進んでいます。このシステムは、国土交通省の2018・2019・2020年度の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM:Public/Private R&D Investment Strategic Expansion Program)において効果が確認され高い評価を得ています。
ものづくりを支える若手技術者、女性技術者支援
マイスター制度・本部員コーチング制度(建築部門)
2009年より「マイスター制度」・「本部員コーチング制度」を実施しており、当社グループ全体の品質推進活動「TAISEI QUALITY」活動の一環として、大成建設の技術やノウハウを確実に伝承するために、技術習得や専門知識習得を推進し、生産能力の向上と施工管理体制の強化を図っています。マイスターに選任された社員や作業所経験が豊富な建築本部の幹部社員が、実際に現場に出向き、若手及び中堅社員に密着し、OJTを通じて技術力、品質管理力、現場運営力などの教育・指導を行っています。
教育サポーター制度(土木部門)
2009年より「教育サポーター制度」を導入しており、作業所長経験者の中から選任された教育サポーターが若手社員のOJT教育状況を確認し、支援・指導しています。生産能力と体制を強化するために、「労務環境の整備」や「人財確保」に加え、社員のマネジメント能力の強化を図っています。具体的には、「社員の現場力向上」を目標に掲げ、工程管理能力、設計力、積算力、交渉力、実行力などの能力を高めるため、「OJT教育」を導入・運用しています。
「けんせつ小町」が実現する女性活躍推進
建設現場での女性活躍推進の一環として(一社)日本建設業連合会(日建連)の「けんせつ小町」に協力し、女性技術者の活躍を後押ししています。当社でも2014年より土木・建築部門において、役員と女性技術者との対話の機会を設け、女性が活躍できる環境の整備に取り組んでいます。
また、けんせつ小町活躍推進表彰の最優秀賞と特別賞を受賞した作業所の女性活躍における改善事例を、他の建設作業所へと水平展開する等、女性が働きやすく、働き続けられる労働環境を実現できるよう日建連の会員企業として、業界全体で力をあわせて取り組んでいます。
けんせつ小町:「けんせつ小町」は建設業で働くすべての女性の愛称です。建設現場で働く技術者・技能者、土木構造物や建物の設計者、会社の運営を支える事務職、営業担当者、研究者など、活躍の舞台は多岐にわたります。
情報管理の徹底
お客様の情報管理の徹底について
「顧客情報の管理に関するガイドライン」に基づき、お客さまの要求する情報管理を徹底するため、工事毎の機密性の高さに応じたセキュリティレベルを設定し、社内の関係部署で確実に共有し、顧客情報の適切な管理を徹底しています。
建設業界全体の情報セキュリティレベルの向上
(一社)日本建設連合会のICT推進部会、情報セキュリティ部門に参画し、ガイドラインやパンフレット、ポスターや動画の作成に参加し、情報セキュリティセミナーで登壇するなど、建設業界全体の情報セキュリティ向上の活動を行っています。
大成建設独自の活動としては、機密性の高い工事情報を取り扱う一部の協力会社に対して、情報セキュリティ教育を毎年実施しています。
また、誰でも自身のパソコンのセキュリティ対策状況を確認できるよう、セキュリティベンダーと共同開発した「パソコンセキュリティ診断サイト」を無償公開し、大成建設と取引関係にある企業や同業他社などと共同利用することで、当社だけに留まらない建設業界全体の情報セキュリティレベルの向上を目指しています。
データ
ISO14001/ISO9001/ISO45001 取得状況
ISO9001 | ISO14001 | ISO45001 | ||
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大成建設 | 大成建設 | ― | ◯*1 | ― |
大成建設 土木部門 | ◯ | ◯ | ◯ | |
大成建設 建築部門 | ◯ | ◯ | ― | |
大成建設 設計部門*2 | ◯ | ◯ | ― | |
大成建設 エンジニアリング部門 | ◯ | ◯ | ― | |
大成建設 原子力部門 | ◯ | ◯ | ― | |
グループ | 大成ロテック(株) | ◯*3 | ◯*1 | ― |
大成有楽不動産(株) | ◯*4 | ◯*1 | ― | |
大成ユーレック(株) | ◯*1 | ◯*1 | ― | |
大成設備(株) | ◯*1 | ◯*1 | ― | |
成和リニューアルワークス(株) | ◯*5 | ― | ― | |
(株)ジェイファスト | ◯*6 | ― | ― | |
(株)佐藤秀 | ◯*1 | ― | ― | |
ピーエス・コンストラクション(株) | ◯*7 | ◯*7 | ―*8 | |
現地法人 | TAISEI (THAILAND) CO., LTD. | ◯*1*9 | ◯*1*9 | ◯*1 |
VINATA INTERNATIONAL CO., LTD | ◯*10 | ― | ― | |
PT. TAISEI PULAUINTAN CONSTRUCTION INTERNATIONAL | ◯*1 | ― | ◯*1*11 | |
中建ー大成建築有限責任公司(中国) | ◯*1 | ◯*1 | ◯*1 |
- *1全社一括して取得
- *2設計部門でIS027001(情報セキュリティマネジメントシステム)も取得
- *3大成ロテック(株)建設事業本部・製品事業本部・建築本部にて取得
- *4大成有楽不動産(株)ビル管理本部(登録範囲:首都圏5支店のビルメンテナンス業)、マンション管理事業本部取得
(登録範囲:マンション管理組合の会計処理業務)、九州支店(登録範囲:ビルメンテナンス業)で取得 - *5成和リニューアルワークス(株)工事統轄部、機械統轄部で取得
- *6ジェイファスト本社(工務部 工務2課、技術部 技術課、技術部 ISO推進課)、東京支店(営業部、設計部、工務部)、大阪支店(営業部、設計部、工務部)で取得
- *7下請工事及び海外工事を除く全社にて取得(ただし、ISO9001において、一部の本社部署を除く)。ピー・エス・コンクリート社の本社及び全工場で取得
- *8労働安全衛生マネジメントシステムは建設業労働安全衛生マネジメントシステム(コスモス(COHSMS))を取得
- *9英国認証(インターナショナルスタンダード)とタイ認証(タイ・スタンダード)の両方取得
- *10VINATA INTERNATIONAL CO., LTD本社とホーチミン支店で取得
- *11SMK3(インドネシア版ISO45001)も取得