水資源・水環境
方針・基本的な考え方
大成建設グループは、環境方針に掲げた「持続可能な環境配慮型社会の実現」のために、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を策定し、水資源・水環境の個別課題に対する責務、事業を通じた貢献、取り組みを定めています。基本的な考え方については、環境方針に記載しています。
責務
大成建設グループは、建設業を中核とした企業グループとして、事業活動が水資源・水環境に及ぼす影響と水資源・水環境から受ける影響を十分に認識し、適切な管理の徹底と使用量の削減により、水資源・水環境への負の影響を最小化することを責務とします。
事業を通じた貢献
大成建設グループは、水資源・水環境に関する「リスクと機会」を的確に抽出し、保全と再生に向けた技術・サービスの開発・普及により、自然と共生する事業を推進し、正の影響を最大化することで、持続可能な水資源・水環境の実現に貢献します。
ポリシー/コミットメント
- グループ行動指針:環境の保全と創造への取り組み
- グループ環境方針
- TAISEI Green Target 2050:2つの個別課題
- エコ・ファーストの約束
- 大成建設グループ サステナブル調達ガイドライン
- 大成建設グリーン調達ガイドライン
目標
グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」
2050年に向けたグループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を定め、「3つの社会(脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会)の実現と「2つの個別課題(森林資源・森林環境、水資源・水環境)」の解決を目指してします。
2つの個別課題
目標 | |
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森林資源・ 森林環境 |
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水資源・水環境 |
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取り組み
大成建設は、水インフラ施設の建設に加え、水資源の保全と再⽣に向けた技術・サービスの開発・普及により、⾃然と共⽣する事業を推進することで、持続可能な水資源・水環境の実現に貢献しています。
Ⅰ. 持続可能な水資源の活⽤
水資源の有効利用
大成建設グループでは、全役職員が参画する環境負荷低減活動「TSA|TAISEI Sustainable Action®」の取り組みを進めています。
2011年に環境負荷低減に向けた7つの基本的な取り組みである「CO2ゼロアクション」を全ての作業所で開始しました。取り組みの1つに「雨水・湧水の有効利用」を掲げており、現在もTSAの一部として継続して取り組んでいます。
2018年に環境負荷低減に向けた具体的な取り組みを一覧にした「TSAアクションリスト」を作成し、TSAの取り組みを開始しました。約600の全作業所に適用されるTSAアクションリストには、「工事用水を循環利用・再利用する(雨水や湧水の場内利用を含む)」という項目が含まれており、使用済み工事用水を利用目的に即した浄化を行うことで再利用することや、雨水や湧水を場内の散水、工事車両のタイヤ洗浄等に利用すること等による、水使用量の削減につながる水マネジメントを進めています。
特に、泥水式シールドトンネル工事や土壌汚染対策工事においては、多量の水が必要となるため、水の使用量を抑えるために泥水(土砂搬送水や洗浄水)を濁水処理したリサイクル水を利用しています。
また、本支店のオフィスおよび約600ある全ての建設工事作業所の事務所において、「節水型トイレの設置」及び「節水型水栓の設置」を推進しており、全社で水使用量の削減に取り組んでいます。
更に、技術センター「人と空間のラボ(ZEB実証棟)」では、屋上に設置した太陽光発電パネルに降った雨を雨水利用槽に溜め、1階及び2階のトイレ洗浄水に利用しています。
サプライチェーンに対しては事業を通じて環境課題や人権を始めとする社会課題の解決に貢献するために、当社グループと取引先が協働して実施する事項をまとめた「大成建設グループサステナブル調達ガイドライン」を定め、全ての専門工事業者や建設資材納入業者にガイドラインの遵守を求めています。当社と全てのサプライヤーとが協働して、水使用量の削減や効率的な使用、産業廃棄物、有害化学物質、汚染物質の排出削減と適正管理、環境関連法令の遵守による環境事故の防止に取り組んでいます。
また、環境に関する業界団体・行政との連携した取り組みとして、健全な水循環の維持または回復を目的とした取り組みの促進等を推進する官民連携プロジェクトである環境省の「ウォータープロジェクト」※に参加し、他社との情報共有を行うとともに、節水など水資源の保全や水リスクに関する取り組みを推進しています。
更に、国連機関・国際機関や各国のNGO等と連携して水問題の解決に取り組むNPO法人「日本水フォーラム(JWF)」の趣旨に賛同し、会員として参加しています。
- ※ウォータープロジェクトは、2014年に環境省による「水循環基本法」に基づき発足した官民連携の機会の場を創出するプロジェクトです
大成建設の総取水量・排水量
(単位:千m3)
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
取水量 | 1,436 | 1,414 | 1,412 | 2,266 | 2,279 | 2,012 |
排水量 | 4,483 | 4,288 | 6,625 | 9,677 | 3,014 | 3,948 |
- ※毎年、工事施工場所が変わるため、前年との比較は有意ではありません
脱炭素に寄与するエネルギー生産型の下水処理技術
嫌気処理※1と膜分離技術※2を組み合わせた嫌気MBR(Membrane Bio Reactor)※3を用いて、下水から発電などに活用できるメタンを生成して脱炭素に寄与するエネルギー生産型の下水処理技術を開発し、ラボスケール実験によりその効果を確認しました。
本技術の適用により、下水を処理しながら安定したメタン生成が可能となり、下水処理における消費エネルギー削減と創エネルギー※4を実現できます。エネルギー収支の大幅な改善が見込めることから、環境負荷が少ない新たな下水処理システムとしての活用が期待されます。
- ※1嫌気処理:
酸素の無い嫌気条件下で複数種の嫌気性細菌の代謝作用により有機性排水・廃棄物等に含まれる有機物をバイオガス(メタンと二酸化炭素で構成)に変換する手法。 - ※2膜分離技術:
膜を活用し、水と固形分を分離させる手法。 - ※3嫌気MBR:
嫌気処理と膜分離技術を組み合わせたプロセスであり、分離膜を使用することで分解に必要な微生物を高濃度に保持することや処理した水質の向上が可能になる。 - ※4創エネルギー:
嫌気MBRによる処理で発生したメタンをガスエンジン等で変換した電気や熱のこと。
水ストレス地域での事業活動
2050年にむけたグループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」において、水資源・水環境の課題解決のために、適切な管理と使用料の削減により、水資源・水環境への負の影響を最小化することを責務としており、特に水ストレスが高い地域での事業活動については、より、徹底した水マネジメントを実施することとていします。そのため全ての作業所についてWorld Resource Institute(世界資源研究所)の「Aqueduct Water Risk Atlas※1」を用いて、事業活動(土木・建築工事)地域での水リスクを把握し、水ストレスの高い地域での事業活動について適切に管理しています。
(1)国内での事業活動
「Aqueduct Water Risk Atlas」で日本国内の約600の作業所及び本支店のオフィスの所在地をもとに確認した結果、水ストレス※2が「④高い」以上の地域に所在する作業所・オフィスはありませんでした。
(2)海外での事業活動
「Aqueduct Water Risk Atlas」で海外の主要作業所の所在地をもとに確認した結果、水ストレス※2が「高い」「極めて高い」地域に所在する作業所が12カ所ありました。
当該12カ所の作業所を含め、全ての作業所において適切な水管理を行っています。
- ※1Aqueduct Water Risk Atlas:水量、水質、規制・レピュテーションの3カテゴリー13指標を5段階で評価する、水リスクの分析ツール。
- ※2水ストレス:水資源のひっ迫具合を示す指標で、年間取水量を年間流水量で割ることにより求められる。
アジア地域
アフリカ地域
出典:https://www.wri.org/aqueduct
数字は、別表リストの国番号
番号 | 国・地域 | 作業所数 | 水リスク |
---|---|---|---|
1 | 台湾 台北・台中 他 | 4 | ②低~中 |
2 | フィリピン マニラ 他 | 3 | ④高い |
3 | ベトナム ハノイ、 ホーチミン 他 |
2 | ④高い |
ベトナム ホーチミン 他 | 1 | ④高い | |
4 | インドネシア ジャカルタ |
2 | ⑤極めて高い |
インドネシア 西ジャワ州 |
2 | ⑤極めて高い | |
5 | シンガポール | 2 | ①低い |
6 | タイ ラヨーン県 他 | 6 | ③中~高 |
7 | エジプト アレクサンドリア |
1 | ⑤極めて高い |
8 | インド ムンバイ | 1 | ④高い |
9 | カンボジア ブノンペン |
1 | ③中~高 |
海外作業所所在地の水リスク | 作業所数 | 割合 |
---|---|---|
⑤極めて高い | 5 | 20% |
④高い | 7 | 28% |
③中~高 | 7 | 28% |
②低~中 | 4 | 16% |
①低い | 2 | 8% |
Ⅱ. 水資源の再生
ゼロウォータービル(ZWB)を実現する水環境技術
大成建設技術センターの「人と空間のラボ(大成建設ZEB実証棟)」では、LEED Zero Program Guide※1で提示されたZero Water※2を目指して技術実証を行い、2024年に国内初の「LEED Zero Water」認証を取得しました。
雨水や建物内の手洗い等の排水を浄化した再利用水を、トイレの洗浄水等に利用することで再利用水の用途拡大を図りました。1年間にわたる技術実証の結果、年間の全体使用量において、雨水と再利用水(代替水)の合計値が上水の値を上回る状況を実現しました。
芝浦水再生センター雨天時貯留池その3工事
港区の全部、千代田区、中央区、新宿区、渋谷区の大部分、文京区、豊島区、品川区、目黒区、世田谷区の一部から流集する汚水を処理し、東京湾に放流する施設です。本工事は、流集してくる初期雨水を貯留し、放流先の水質改善を図るための合流式下水道改善施設である雨天時貯留池を築造したものです。
品川シーズンテラス
共同開発者・東京都下水道局との協働
東京都下水道局が所有する芝浦水再生センター敷地内で、地下に下水道施設を整備し、その上部に業務・商業系ビルを建設する、前例のない開発⼿法によって「環境配慮型オフィスビル」を実現した、東京都、共同で事業を推進しているNTT都市開発(株)、大成建設(株)、みずほ信託銀行(株)、東京都市開発(株)による官⺠連携プロジェクトです。
厨房排水を浄化した処理水、トイレの⼿洗い等を浄化処理した再生水、都下水道局から購⼊し引き込んでいる再生水、雨水をトイレの洗浄用水や植栽への潅水など様々な用途で活用しています。
御茶ノ水ソラシティ
大成建設(株)、安田不動産(株)、大成有楽不動産(株)の3社が出資する特定目的会社が事業主体となり、協働して開発を進めてきたプロジェクトです。
水の有効活用として、地下鉄千代田線新御茶ノ水駅から地下鉄湧出水及び敷地降雨水・屋根降雨水を受け⼊れて、ろ過後の水を水冷チラーの冷却水として利用、合わせて外構植栽の⾃動灌水やトイレ洗浄水にも利用しています。
アマモ移植工法
播種・株植え作業が不要で簡易な海草移植工法です。移植元となる天然海草場へのダメージが従来方法に比べて少なく、海草の自然発芽力を利用することにより、従来方法より簡易な作業で海草移植ができます。
移植作業は、天然のアマモ場にヤシ繊維性のマットを設置し、マット上にアマモの種子が自然落下・発芽することによりアマモをマットに定着させ、このマットを移植先に移設することで完了します。
移植基盤として厚みのあるヤシ繊維マットを用いることにより、地下茎により繁殖する海草の移植にも活用できます。マットの上部や内部に地下茎が伸長することにより海草がマットに定着し、天然アマモと同等に繁殖・生育することを海域実験で確認しています。
サンゴ移植技術
サンゴの産卵を利用して増殖させる技術です。放卵され卵からかえったサンゴの幼生を着床具に付着させ、着床具の上で成長させた後に器具ごと移植する、有性生殖によるサンゴの移植工法です。従来のセラミックス製着床具より安価なコンクリート製着床具を開発しました。サンゴ幼生の浮遊シミュレーションや生育地選定モデルにより、移植適地を選定します。
水辺コンシェルジュ
建設⼯事に際し、水辺に生息する希少動植物の保全を目的とした代償地の創出など、希少動植物の保全計画の迅速な検討・⽴案を可能とするツールです。
タブレット端末上に保全計画策定に必要な情報をビジュアルでわかりやすく提⽰することにより、関係者とのスムーズな合意形成及び情報共有を図るとともに、適切な代償候補地の選定など保全計画の⽴案を早期に実施することが可能になります。
<水辺コンシェルジュの特徴>
- 希少動植物の名称から保全計画策定に必要な情報をビジュアルにわかりやすく提⽰します。
- 代償地として水辺を創出する候補地を適切に選定します。
- 従来より早期かつ短期間での保全計画の⽴案を可能にします。
アクアトープ®
ビオトープは藻類の増殖により、水質が汚濁したり悪臭が生じるといった課題がありました。アクアトープ®は、藻類の増殖因子の一つである硝酸体窒素を独自開発の機能炭で除去し、長期的な水質保全を実現する次世代型のビオトープです。
<アクアトープ®の特徴>
- 廃棄物の資源化:廃棄物であるコーヒー滓を改質し、硝酸体窒素を吸着できる機能炭として利用しています。使用後の機能炭は植栽の肥料としてリサイクルします。
- 水質の安全性:殺藻剤等の薬剤を使用しないため、生態系に影響を及ぼしません。
- 生物多様性の向上:アクアトープ®施工後には、未確認だった動物や昆虫が出現し、生物多様性の向上が期待されます。
新環境DNA分析技術を用いて希少生物の水生生息状況を把握
水や土などに含まれる生物由来(生物の破片、排泄物等)のDNA分析技術(環境DNA分析技術)を用いて、建設現場周辺の保全対象地域に生息する希少生物「(サンショウウオ類)の継続的な生息調査を行っています。この分析技術を活用することで、従来の目視調査では困難であった産卵期以降の水中での生息状況を把握することが可能です。希少両生類の生息状況を長期間モニタリングすることが可能であるため、建設工事中に確実な保全対策を実施することができます。
汚染⼟壌・汚染地下水浄化技術
大成建設では1990年代から土壌・地下水汚染浄化技術の開発を進め、1991年以来、1,589件の調査工事と1,651件の対策工事を実施しています。(2023年3月現在)
マルチバリア®工法
地下水流向の下流側に透水性のある地中連壁を構築し、揮発性有機化合物や重金属などによる汚染地下水を浄化して敷地外への汚染物質の流出を抑制する技術です。
- メンテナンスフリーな原位置地下水対策が可能です。
- 汚染地下水の拡散を確実に防止できます。
- 多様な複合汚染地下水に対応できる透過性地下水浄化壁工法です。
注水バイオスパージング
地下水中に空気と一緒に浄化菌を活性化する栄養塩を含む溶液を供給してベンゼンやシアン化合物等を浄化する技術です。
- 空気と栄養塩が同時に地中に広がるため均一な浄化が可能です。
- 従来の微生物分解工法に比べ、短期間に浄化が可能です。
- 高濃度の汚染から低濃度の汚染まで工法を変えることなく浄化が可能です。
硝酸性窒素による地下水汚染の防止技術
硝酸性窒素で汚染された地下水の流路に微生物の脱窒反応を促す有機物を⻑期的に放出する浄化材(徐放性有機物)を混合した浄化壁を構築し、硝酸性窒素を無害な窒素ガスに変換する浄化技術です。浄化壁は水源地などを守る鉛直浄化壁と、施肥量の多い畑地の下部に設置して帯水層への硝酸性窒素の負荷量を減らす水平浄化壁の2種類の浄化壁を開発しています。
- 地上部の利用を妨げずに、数⼗年間、地下水中の硝酸性窒素を浄化します。
- 揚水等の処理を行う必要がなく、メンテナンスフリーで浄化が行えます。
- 微生物の脱窒作用を利用する浄化技術であるため、安全性が⾼く、⼆次汚染が生じません。
泥水式シールド工事における泥水の循環利用技術(自然由来砒素を含む場合)
泥水式シールド工事で使用する泥水は、濁水処理プラントで処理を行い脱水工程から出る絞り水は循環利用しています。砒素などの汚染物質が含まれる場合は汚染を取り除くことが可能です。脱水した汚泥(二次処理土)も砒素が取り除かれているため再利用が可能です。
- 水も土も資源として再利用可能です。
- 砒素が吸着した鉄粉の再生技術により、鉄粉を繰り返し使用できるため、材料費の低減・低環境負荷を実現できます。
- 砒素除去設備はコンパクトであり、既存の泥水処理施設に容易に設置可能です。
豊洲新市場土壌汚染対策工事(7街区)
都市ガス工場の操業に由来する、特定有害物質(ベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム及びカドミウム)による汚染土壌及び汚染地下水を処理する工事です。汚染土壌は、仮設土壌プラント(別工事)へ搬出し、処理済み土を搬入、埋戻を行います。また、汚染地下水は揚水・注水機能を強化した注水バイオスパージング工法を用いて短時間で浄化を完了しました。土壌汚染対策面積は129,232m2です。
Ⅲ. 水資源の保全
⼯事排水の適切な管理
大成建設では「ISO14001」の認証を取得し、海外を含む全ての作業所・オフィス(約700か所)において構築したEMS(環境マネジメントシステム)の中で、当社で定める「⽀店・作業所の環境重点管理書」「環境法規制等チェックシート」によって⼯事排水の管理を徹底しています。また本部⻑や⽀店幹部による種々の現場パトロール、社内基準に基づいて教育を受けた担当者などによる環境⾯に特化したパトロールを実施し、各作業所の取り組みの評価と改善指導を⾏っています。
- 1.工事計画時に、「環境法規制等チェックシート」を活用し、排水先や地方条例等で定められた排水基準や関係法令を確認する。
- 2.作業所やその周辺の環境特性及び工事計画地に適用される排水基準を踏まえた排水方法と管理計画を立案する。
- 3.必要に応じて、行政協議・地元協議を行った後、工事着工する。
- 4.作業所は、管理計画に基づいて工事排水のpH等の水質管理を行う。
(計測頻度は作業所ごとに異なる) - 5.定期・不定期に「環境パトロール」を実施し、フォローアップを行う。
建設事業における建設現場での生産活動の大部分は専門工事業者によって実施されているため、工事排水の処理・管理を含む作業所の環境管理には専門工事業者との協働が必要不可欠です。大成建設では、工事に従事する一次の専門工事業者約7,000社と協働して、作業所の環境管理と環境事故ゼロに取り組んでいます。万が一、専門工事業者による工事排水の管理に不備があった場合や環境事故が発生した場合は、速やかに大成建設に報告することを徹底しており、この義務が守られないときには取引の停止を含む措置を行う場合があります。
水害復旧
利根川水系鬼怒川における堤防決壊による災害応急対策
2015年9月に関東地方を襲った集中豪雨の影響で、9月10日に鬼怒川の堤防が約200mにわたり決壊し、決壊箇所周辺では氾濫流により多くの家屋が流出するなどの被害が出ました。当社は、決壊した堤防の応急復旧工事を24時間体制で行い、決壊から1週間後には根固めブロック設置及び仮堤防の盛土を完成させ、2週間後の9月24日には補強の二重締切工事までを含めた応急復旧工事を無事完了させました。
本工事は国土交通省関東地方整備局との災害時協定に基づいた、災害応急対策工事です。
逢初川水系応急対策工事(熱海土石流災害の復旧工事)
熱海市において2021年7月3日発生した土石流により被害を受けた逢初川の緊急復旧として、除石工、工事用道路、仮堰堤工を施工するものです。既設堰堤除石のために、ヘリによる土砂搬出をしながら、右岸拡幅進入路及び工事用道路を造成し陸上からも土砂搬出しました。合わせて下流域の住民及び応急復旧作業の2次災害防止を念頭に、ネットロール土嚢及び仮設ブロック堰堤を築造しました。2022年度からは本設堰堤の新設を進めています。
浸水リスク評価システム「T-Flood® Analyzer」
建物周辺が浸水した際に、建物内の各室がどのように浸水するかを解析しリスクを評価します。建物内の各室への浸水経路、浸水量、浸水時間などの解析結果は任意の位置で可視化し、建物内各室への流入経路や浸水深さを一目で把握することが可能となります。また、浸水時における各室から地上出口までの最短避難経路や所要時間を算出することができ、建物や利用者の状況に即した防災対策に寄与します。さらに解析結果を任意の視点で3次元表示できるため、関係者間で浸水状況や浸水リスク情報の共有を容易にできる等、合意形成ツールとして有効です。
雨水浸透・貯留機能の⾼い外構創出技術「T-GI® rain garden」
雨水の浸透性と貯留性を併せ持つ新しい植栽基盤材を⽤いた外構施設創出技術「T-GI® rain garden」を開発し、その有効性を実証試験により確認しました。
「T-GI® rain garden」の特徴は以下の通りです。
- 1.雨水の浸透・貯留機能に優れた基盤材を実現
保水性に優れた多孔質な火山砂利を採⽤すると共に、⼟壌中の空隙を確保するために粒径の異なる火山砂利を適切に配合した素材を⽤いることより、雨水の浸透性と貯留性に優れた基盤材を実現しました。 - 2.基盤材に直接植栽可能で、植栽範囲を拡大
従来技術は基盤材に砂利など浸透性のみに優れ、貯留性(保水性)の低い素材を⽤いていたため、植栽には適していませんでした。新規開発の基盤材を⽤いることで雨水を浸透させるだけでなく、⼟壌中に貯留(保水)できるため、基盤材に植栽することが可能となり、レインガーデンの範囲を拡大できます。 - 3.降雨時に敷地からの雨水流出量のピークの低減・遅延が可能
降雨の際、敷地から流出する雨量のピークを低減・遅延させる効果(実測例では雨水流出量のピークを約85%低減し、屋内試験ではピーク発⽣時間を35分後から60分後まで遅延)を有し、都市部で発⽣する水害の抑制に貢献することが可能です。 - 4.様々なタイプの植物を⽣育可能
基盤材が⼀時的に雨水を貯留するため、植物の⽣育環境として湿潤な環境からやや乾いた環境までの幅広い種類の植物を育成できることを確認しており、様々なタイプの緑地を創出することが可能です。
BCP
本⽀店や建設⼯事作業所が水害を含む災害に被災した場合でも事業を継続するためにBCP(事業継続計画)を策定し、毎年訓練を⾏っています。BCPの内容は実際に発⽣した災害や社会情勢を反映させるため、適宜⾒直しを⾏っており、備品・システムの整備や備蓄品の購⼊などに年間約1億円の経費を⽀出しています。