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自然共生社会の実現に向けて
方針・基本的な考え方
大成建設グループは、環境方針に掲げた「持続可能な環境配慮型社会の実現」のために、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を策定し、自然共生社会の実現に向けた責務、事業を通じた貢献、取り組みを定めています。基本的な考え方については、環境方針に記載しています。
責務
大成建設グループは、建設業を中核とした企業グループとして、事業活動が自然共生社会への移行に及ぼす影響と自然共生社会への移行から受ける影響を十分に認識し、「大成建設グループ生物多様性宣言」を遵守して、建設事業に伴う自然環境および生物多様性への負の影響を最小化することを責務とします。
事業を通じた貢献
大成建設グループは、自然共生社会の実現に向けた「リスクと機会」を的確に抽出し、自然環境の保全・創出や生物多様性の向上などに関連する技術・サービスの開発・普及により自然と共生する事業を推進し、自然環境および生物多様性への正の影響を最大化することで、「自然共生社会」の実現に貢献します。
リスクと機会
地球の持続可能性の土台かつ人間の安全保障の根幹である自然資本や生物多様性を守り活かすために、ネイチャーポジティブの実現が世界的な重要課題となっており、企業にもネイチャーポジティブ実現に寄与する取り組みが求められています。建設業は自然と密接に関係しています。鉄筋・鉄骨、セメント・コンクリート、砂、ガラス、木材など建設資材の多くが自然資本に依存しています。また土地の改変や分断などにより自然資本に負の影響を及ぼす一方で、都市環境における自然の創出などにより正の影響を及ぼしています。当社は、2022年6月にTNFDフォーラムに参加、TNFD提言に賛同し、TNFD Early Adopterとして2024年1月に公表されたリストに掲載されています。
自然共生社会への移行が滞り、自然資本の減少が継続する場合、資源不足による資材価格の上昇や、自然環境対策賦課金の増額によるコスト増等のリスクが当社グループに及ぶことが想定されます。また、当社グループの取り組みが十分でない場合には、ステークホルダーからの評価が低下し、受注機会が減少する等のリスクが想定されます。
一方で、自然共生社会への移行に伴い、当社グループにおいてはネイチャーポジティブ実現に貢献する豊かな自然環境の保全・創出やグリーンインフラの整備に関連する受注機会の増加が見込まれます。また、当社グループが進めている技術・サービスの開発及び社会実装の促進は、競争優位性の確保・向上に寄与します。
当社グループにとって、自然共生社会への移行は企業価値向上やステークホルダーからの評価向上につながる機会であると考えています。
ポリシー/コミットメント
- グループ行動指針:環境の保全と創造への取り組み
- 環境方針
- TAISEI Green Target 2050:自然共生社会の実現
- エコ・ファーストの約束
- 大成建設グループ生物多様性宣言
- 大成建設生物多様性保全ガイドライン
- 大成建設グループ サステナブル調達ガイドライン
- 大成建設グリーン調達ガイドライン
- グリーン購入標準ガイドライン
- 【TAISEI VISION 2030】達成計画 事業基盤の整備方針:サステナビリティ戦略(環境・エネルギー)
目標
グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」
ネイチャーポジティブの実現・深化
- 建設事業に伴う負の影響の最小化
- 自然と共生する事業による正の影響の最大化
2030年グループ環境目標
ネイチャーポジティブに貢献する、
- プロジェクトの推進 50PJ/年以上
- 評価手法の展開
設計施工PJのうち30%に適用 - 海洋課題への対応
ロードマップ
KPI
- KPIについては、マテリアリティをご覧ください。
イニシアチブ
- 国連グローバル・コンパクト「環境」
- 経団連生物多様性宣言イニシアチブ(日本経済団体連合会、経団連自然保護協議会)
- 東京グリーンシップ・アクション(東京都環境局)
- (一社)企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)
- 生物多様性のための30by30アライアンス(環境省)
- TNFDフォーラム
イニシアチブ
東京グリーンシップ・アクション
- 東京都環境局では、平成15年度から、都内にある50地域の「保全地域」のうち、いくつかの地域で企業・NPOや企業、行政等と連携した自然環境保全活動を実施し、これらの地域を企業の社会貢献活動の場として活用しています。当社はこの取り組みに賛同し、「七国山緑地保全地域」の緑地保全活動東京グリーンシップ・アクション(東京都主催の里山保全活動)に10年以上にわたり参加しています。
(一社)企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)
- (一社)企業と生物多様性イニシアチブ (JBIB:Japan Business Initiative for Biodiversity)は、2008年に設立された生物多様性の保全を目指して積極的に行動する企業の集まりです。当社はJBIBの会員企業として、 「いきもの共生事業所®推進ガイドライン」や「いきもの共生事業所推進協議会(ABINC)」の情報共有や会員企業とのコミュニケーション等を通じて、生物多様性保全に対する取り組みを推進しています。
生物多様性民間参画パートナーシップ
- 生物多様性民間参画パートナーシップに会員企業として参加し、NPO・NGOや研究機関等の国内外の関係組織との連携の下、事業者の生物多様性保全への取り組みを推進しています。また、「大成建設グループ サステナブル調達ガイドライン」によりサプライチェーン全体での生物多様性保全についても推進しています。
生物多様性のための30by30アライアンス
TNFDフォーラム
エコファーストの約束
「エコ・ファースト協議会」への参加
大成建設は、2012年5月に環境大臣と「エコ・ファーストの約束」を交わし「エコ・ファースト企業」の認定を受け、約束の確実な実行を進めています。また「エコ・ファースト企業」94社(2024年3月現在)が加入する「エコ・ファースト推進協議会」に幹事として参加し、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブなどの環境課題の解決に向けて、環境省や他のエコファースト企業との連携を強化しています。
取り組み
自然環境は、奥山や里山、都市から海に至るまで、多様な環境がつながりをもって成り立っています。大成建設では、ネイチャーポジティブの実現・深化に向け、多様で良質な自然環境・グリーンインフラを保全・創出する取組みを実践しています
グリーンインフラの推進
品川シーズンテラス
- 芝浦水再生センター敷地の上部を有効利用した複合ビル「品川シーズンテラス」では、汚れた雨水が直接海に流れないように、大雨降雨初期の水を一時的に貯蓄できるよう水再生センターの地下に雨天時貯留池を建設しました。また、地上に設けた人工地盤に広大な緑地を整備し、東京湾からの風をこの緑で冷却して都心に送ることにより、水・緑・風を活かしたグリーンインフラとなる、水と緑のオープンスペースを整備しました。
生物多様性保全ガイドラインの活用
生物多様性保全ガイドライン(2022年4月改定)は、「全社的な取り組み」「計画・設計における取り組み」「調達・施工における取り組み」の3つのアクションからなる行動指針です。生物多様性関連技術の提案と展開および野生生物の保護を含むガイドラインに沿った施工により環境影響の抑制を実施しています。
また従業員に対する定期的な環境教育や、環境保全に関する社会貢献活動も実施しています。
生物多様性に配慮した調査・計画・施工・モニタリング
大成建設は、工事を計画する段階で生物多様性に関するリスクを抽出し、着工から竣工にいたるまでフォローする仕組みを導入しています。調査・分析に基づいた自然共生に貢献する計画を、お客様に提案し、適切な自然環境の保全・創出に取り組んでいます。また、生態系への配慮が必要と判断されたすべての案件において当社独自の環境計画技術であるエコロジカルプランニングを策定・実行しています。エコロジカルプランニングは、生物多様性条約の生物多様性行動計画(BAP)に相当するものです。当社の保有する様々な技術を用いて計画地とその周辺環境も調査・分析し、地域特性を踏まえた計画を立案、施工することで良質な社会資本の整備に努めています。竣工後にはモニタリングを実施し、その結果をフィードバックすることにより技術の深化を図っています。
また当社では独自の生物多様性の評価・計画ツールとして、モニタリングや予測評価に活用できる「コンシェルジュ」シリーズを開発しています。これにより、容易に計画地の環境を把握・共有することができ、自然環境を適切に保全・創出することが可能となりました。
自然環境保全
大成建設が施工した地域社会の持続可能な好循環への取り組み
- OKI 本庄工場H1棟では、森林循環を構築する活動に当社も参加しています。
施設内に同じ荒川流域である秩父産の木材を積極的に利用し、木材を伐採した山林を再造林するための費用の一部を負担する他、植林活動にも参加しています。
将来に向けた山林の再生、森林資源の循環にお客様や地域とともに取り組み、森林循環に貢献しています。
環境DNA
- 水や土などに含まれる生物由来のDNA 分析技術を用いて、建設現場周辺の保全対象地域に生息する希少両生類(サンショウウオ類)の継続的な生息調査を行いました。この分析技術により、従来の目視調査では困難だった産卵期以降の水中での生息状況を把握し、建設工事中の継続的な生物環境モニタリングが可能となりました。
自然の森に倣った苗木からの森づくり
富士山南陵工業団地の開発では、地域の環境に適した樹木を用いて、自然の森に倣った「10年の森づくり」を実施しました。樹木を互いに競わせながら森を育む「自然配植緑化」の手法を用いて植樹祭で苗木を植栽し、植栽から10年後には、周囲に残された森よりも生物多様性に富む森が形成されていることが確認されています。(令和2年度土木学会環境賞 受賞、第49回環境賞 環境大臣賞 受賞)
ネイチャーポジティブを目指した自然環境の保全・創出
呉市一般廃棄物処分場
一般廃棄物最終処分場「エコ・グローブくれ」は2015年に完成、運用を開始しました。
開発で失われる里山環境の生物保全に向け、調査に基づいて保全計画を立案し、代償ビオトープを創出しました。その後の調査では保全対象生物の生息が確認されています。
札幌ドーム(北海道札幌市)
~継続的なモニタリング調査の実施~
1997年の札幌ドーム建設の計画段階では、建設予定地が住宅地と自然豊かな羊ケ丘に隣接しているため、設計条件として自然への配慮が求められていました。そこで、より多様な生物が利用する環境の創出を目的として、エコロジカルプランニングの手法を用いて、計画条件を提案し、生物に配慮した外構計画を作成しました。
2001年の施設稼働後も、現在まで長期間にわたりモニタリングを実施しています。モニタリングの結果、指標とした鳥類の多くが確認できた他、鳥類、蝶、トンボの種類が全て計画段階より増加しており、着工前よりも生物の多様性が高く、創出した環境がネイチャーポジティブに寄与していることを確認しました。
また、建設~モニタリングの取り組みや結果を活かし、㈱札幌ドーム様の実施している環境啓発活動を支援しています。更にそこで得られた知見・ノウハウを活かして、生物多様性を定量的に評価し可視化するツールとして「いきものコンシェルジュ」を開発しました。エコロジカルプランニング手法とともに、他のプロジェクトに幅広く展開し活用しています。
ESR 尼崎ディストリビューションセンター(兵庫県尼崎市)
~⽣物多様性保全・創出活動を通じた施設価値向上~
自然環境に配慮した施設であることを証明する環境認証を取得することは、施設の価値を向上させ、お客様の企業イメージの向上に繋がります。大成建設は、施設の計画、設計から施工まで一貫して担当することができる総合建設業の強みを活かし、環境認証の取得も含め、お客様の生物多様性保全・創出などの環境活動を支援しています。
大阪湾臨海部に位置する物流施設「ESR尼崎ディストリビューションセンター(発注者:ESR(株))」では、施設の計画・設計段階において、物流施設の機能を損なうことなく生物多様性を高められるよう外構緑地の計画・設計・施工を実施することで、「いきもの共生事業所推進協議会(ABINC)認証(物流施設版)」の取得をサポートしました。
都市環境における自然の創出
大手町タワー大手町の森
東京の都心部に、都市を再生しながら自然を再生する、地域性に配慮した自然の森を創出しました。ビジネス街を行き交う人々に憩いや安らぎの場を提供するだけでなく、ヒートアイランドの緩和、生態系ネットワークへの貢献など、都市域におけるグリーンインフラとして、多面的な機能を発揮しています。
The Okura Tokyo
長い年月をかけて構築された日本美が、地域の風景としてさらなる歴史を刻み、社会的な価値につなげることをコンセプトとした外部空間を創出しました。
海中・水中の環境再生
アマモ移植工法
播種・株植え作業が不要で簡易なアマモ移植工法です。移植作業は、天然のアマモ場にヤシ繊維性のマットを設置し、マット上にアマモの種子が自然落下・発芽することによりアマモをマットに定着させ、このマットを移植先に移設することで完了します。海域実験により天然アマモと同等に繁殖・生育することが実証されました。
サンゴ移植工法
サンゴの産卵を利用して増殖させる技術です。放卵され孵化したサンゴの幼生を着床具に定着させることで生育します。当社では、従来のセラミックス製着床具より安価なコンクリート製着床具を開発しました。自然のサンゴ礁と同様に多様性の高いサンゴ礁の保全・創出に活用できます。
提案時の生物多様性への配慮の実施(リスク評価)
土木工事では、自然環境と接する場合が多いため、希少動植物の保全やその影響回避を含む様々な生物多様性への配慮の取り組みを、また建築工事では、工場敷地や再開発案件における緑地計画において、健全で良質な生態環境創出の取り組みをそれぞれ行っています。いずれの工事においても「いきものコンシェルジュ®」や「森コンシェルジュ®」「水辺コンシェルジュ®」等の当社独自の生物多様性評価ツールを駆使して、積極的な提案を行っています。
*生物多様性コンシェルジュシリーズ
- 生物多様性に配慮した計画を実現を支援する対話型アプリ。
- 「いきものコンシェルジュ®」:計画地に誘致可能な動物を予測評価する当社独自のツール
- 「森コンシェルジュ®」:計画地の環境に適した植物選定を可能とした当社独自のツール
- 「水辺コンシェルジュ®」:生息環境に影響を受ける水辺の希少動植物を保全・代償するための当社独自の計画ツール
ステークホルダーとの対話・協働
大成建設グループは、生物多様性の損失を食い止め、ネイチャーポジティブの実現・深化に貢献するための活動の一環として、年に複数回、環境省関連部門との意見交換を実施しています。これにより得られた知見を活かして、自然共生社会の実現に向けた取り組みを進めています。
ヤマネの巣箱づくり
- ⼤成建設はニホンヤマネ等を保護する団体「(一社)ヤマネ・いきもの研究所」を支援しています。山梨県北杜市でのアニマルパスウェイ設置を機に、2005年より社員の環境教育・ボランティア活動を実施しています。ボランティアでは、ヤマネについて学びながら巣箱を作成しており、これまで3,538個の巣箱を寄贈しています。また、樹上性小動物のロードキル問題やアニマルパスウェイの啓発アニメーションを製作する資金調達のクラウドファンディングに当社も参加し、アニマルパスウェイ啓発アニメ「約束の森」~ヤマネ物語~が公開されました。
大成1トンくらぶ
- 大成1トンくらぶは、2010年より『会社と社員の家庭でカーボンオフセットを同時に実現』をテーマとしてスタートした環境貢献活動で、これまでに14回実施しています。2012、2015年に支援した「釜石地方森林組合」が管理する「鵜住居(うのすまい)地区」の山林において、2017年5月に不審火による大規模な山火事が発生し、413haが焼失する多大な被害が出ました。そこで、2017年から継続して、この釜石の森林復興のための植林用苗木購入費用や、森林整備費用を寄付するために募金を社内で実施しました。2024年度は、当社グループ社員有志1,097名から1,664,000円の寄付が集まりました。