人権の尊重
方針・基本的な考え方
大成建設グループは、「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、グループ行動指針において「基本的人権・多様性の尊重」を掲げ、人権尊重のための取り組みを推進しています。
2022年に改定した人権方針において、人権尊重の責任を果たすという当社グループの姿勢の社内外に明確にコミットし、事業活動に関連して人権への負の影響を生じさせないよう、自主的・積極的・能動的に企業としての責任を果たすことにより、包摂的な社会の実現に貢献することを、人権尊重に対する基本姿勢として定めています。
また、個人の基本的人権および多様性を尊重し、人種、国籍、宗教、性別、性的指向・性自認、年齢、社会的身分、障がいや傷病の有無、身体的特徴等を理由とした差別、ハラスメント、プライバシー侵害など人権を侵害するあらゆる行為を禁止することを規定しています。
更に、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、事業活動を行う国または地域における人権関連の法令を遵守するとともに、世界人権宣言を含む国際人権章典などの国際人権基準を支持・尊重し、国際人権基準と各国・地域の法令等の間に矛盾がある場合は、国際的に認められた人権を最大限尊重するための方法を追求することとしています。
このような当社グループの人権尊重に関する方針および基本的な考え方は、Webサイトで開示するとともに、従業員には研修やeラーニングにより、取引先には研修や取引開始時のセルフアセスメント実施依頼のメールにより、お客様や株主・投資家には統合レポート等により明確に伝達し、方針の支持と人権の尊重を求めています。
大成建設グループは、これからもビジネスパートナーを含む様々な関係者と協働し、当社グループの事業活動にかかわる全てのステークホルダーの人権尊重を推進していきます。
リスクと機会
建設業は、様々な業種の技能労働者や原材料の調達、加工、運搬企業等から構成される、国内外をまたぐ重層的なサプライチェーンを企業活動の根幹としており、大成建設グループにとっても、関係する役職員、技能労働者及び地域コミュニティを含む、サプライチェーン全体での人権の尊重・配慮は重要な課題となっています。近年、企業の人権尊重への取り組みの重要性は増しており、自社のみならずサプライチェーンも含めた人権の尊重への取り組みが求められていることを認識して、対応を進めています。
ポリシー/コミットメント
- グループ行動指針:風通しの良い企業風土の形成、働きやすい職場の確保、基本的人権・多様性の尊重
- 人権方針
- 人材活用方針(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン方針)
- 【TAISEI VISION 2030】達成計画 事業基盤の整備方針 サステナビリティ戦略(人権)
国連グローバル・コンパクトの支持
大成建設グループは、2018年4月に国連グローバル・コンパクトに参画し、人権にかかわる2つの原則を支持しています。
また、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」や「子どもの権利とビジネス原則」、「世界人権宣言」を含む国際人権章典、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」などの国際人権基準を支持・尊重しています。
国連グローバル・コンパクトの10原則
人権 | 原則1:人権擁護の支持と尊重 原則2:人権侵害への非加担 |
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労働 | 原則3:結社の自由と団体交渉権の承認 原則4:強制労働の排除 原則5:児童労働の実効的な廃止 原則6:雇用と職業の差別撤廃 |
環境 | 原則7:環境問題の予防的アプローチ 原則8:環境に対する責任のイニシアチブ 原則9:環境にやさしい技術の開発と普及 |
腐敗防止 | 原則10:強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗防止の取り組み |
目標
目標
事業活動に関連して、人権への負の影響を生じさせないよう、自主的・積極的・能動的に企業としての責任を果たすことにより、包摂的な社会の実現に貢献します。
KPI
- KPIについては、マテリアリティをご覧ください。
イニシアチブ
- 国連グローバル・コンパクト「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」
- Myじんけん宣言(法務省)
- ISO26000
- HRDD 分科会(GCNJ)
- サプライチェーン分科会(GCNJ)
体制・システム
人権に関する取り組みの推進体制
大成建設では、人権を重要なサステナビリティ課題のひとつと捉え、取締役会委員会であるサステナビリティ委員会の監督責任のもと、コンプライアンス委員会、人事委員会などが連携して、人権尊重のための様々な取り組みを進めています。
日常的な人権尊重および人権への負の影響の防止・軽減については、CSuOであるサステナビリティ総本部長を責任者として、サステナビリティ経営推進本部が他部署・人権啓発推進委員会・サステナブル調達協議会と連携して人権デュー・ディリジェンスや人権啓発活動に取り組み、改善と向上に努めています。
機関 | 活動内容 |
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サステナビリティ委員会 (取締役会委員会) |
人権デュー・ディリジェンスをはじめ、人権尊重の取り組みを監督する役割を担っており、人権に関わる重要事項は、経営会議を経てサステナビリティ委員会にて事前審議を行い、取締役会に付議・報告されています。グループ行動指針の改廃・周知・遵守状況の把握、人権に関する方針の改定、コンプライアンス委員会で審議された企業倫理ヘルプライン運用状況の確認を行っています。 |
コンプライアンス委員会 (特別委員会) |
社長の諮問にこたえる特別な委員会として、社外有識者(弁護士)を委員長とするコンプライアンス委員会を設置しています。委員会では、ハラスメント防止や差別禁止を始めとするコンプライアンスの徹底について審議し、人権侵害の防止に努めています。 |
人事委員会 (業務委員会) |
人事諸施策の立案、実施状況のモニタリング、フォローに関する審議を行い、内容に応じて経営会議や取締役会に付議しています。委員会では、人材活用方針(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン方針)の遵守状況やエンゲージメント調査の結果を対策、従業員の人権に関する事項についても審議を行い、人権尊重の推進に努めています。 |
人権啓発推進委員会 | CSuOを委員長とした、本社各本部と全支店の推進委員から構成される人権啓発推進委員会は、人権課題についての基本方針・施策等を議論の上、人権啓発研修をはじめとする啓発活動を計画し、継続的な人権意識向上のための活動を推進しています。 |
サステナブル調達協議会 | 調達に関連する部門(土木・建築・調達・安全)の管理職とサステナビリティ企画部から構成されるサステナブル調達協議会において、大成建設グループ サステナブル調達ガイドラインの改定や、サステナブル調達アンケートの検討などを行っています。 |
大成建設人権啓発推進委員会 推進体制
役職員のより高い人格形成の支援、人権意識の高い役職員の育成することを目的として、1984年に本社各本部と全支店の推進委員から構成される大成建設人権啓発推進委員会を設置しています。委員会では、人権課題についての対応方針・施策等に関する議論、活動計画の策定と人権啓発活動の見直しを毎年実施し、全社および各部門における人権啓発活動を推進しています。また、毎年1回、委員会開催に合わせて外部専門家による研修会を開催し、人権意識の向上に努めています。
- 開催回数:年2回
- 本社委員会メンバー
- 委員長:サステナビリティ総本部長
- 副委員長:サステナビリティ経営推進本部長
- 副委員長:管理本部人事部長
- 委 員:本社各本部 管理室長 (16部門)
- 幹事:事務局:サステナビリティ経営推進本部 企画室長
- 支店(国内・海外)委員会メンバー
- 委員長:管理部長
- 委 員:各部部長
- 幹 事:総務室長及び管理室長
人権侵害に関する相談窓口と救済
人権侵害に関する各種相談窓口を設け、社内外の全てのステークホルダーからの相談に対応しています。万一、大成建設グループが人権への負の影響の原因となった、あるいは助長したことが判明した場合は、人権方針に則り、適切な手段により速やかにその救済と是正に取り組みます。
取り組み
人権への影響評価及びその防止・軽減
人権方針に基づく人権デュー・ディリジェンスの一環として、当社グループの事業活動が各ステークホルダーに与える、または与えうる人権への負の影響を抽出し、その影響等を定量的に分析・評価して、ステークホルダー毎に「優先的に対応する人権課題」を特定した上で、その防止・軽減に努めています。
また、全社リスクマネジメントにおいて、人権課題に対する取組不足等が当社グループに与える影響の重要度を評価し、全社重要リスクに「人権課題に関するリスク」および「労働環境リスク」を掲げ、その防止・軽減のために全社リスクマネジメントシステムに沿った対策を実施しています。
例えば、当社グループの従業員に関する優先的に対応する人権課題として特定した「長時間労働」や「差別・ハラスメント」については、全役職員を対象としたeラーニング、職位者を対象とした研修、適正な要員配置、上司と部下のコミュニケーションの促進等の対策を実施しています。
人権啓発活動
大成建設では、グループ理念「人がいきいきとする環境を創造する」及び、グループ行動指針「基本的人権・多様性の尊重」等のもと、人権を尊重する企業文化の醸成とグループ一体となった人権意識の向上に継続して取り組んでいます。
2022年4月には、2015年に定めた人権方針を改定し、人権を尊重する責任を果たすという当社グループの姿勢を社内外に明確にコミットしました。合わせて、具体的な取り組みとして人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、実施しています。
人権方針については、全てのステークホルダーに明確に表明するためにWebサイトで開示しており、サプライチェーンに対しては、大成建設グループ サステナブル調達ガイドラインにより、全ての事業活動において人権を尊重することを求めています。
人権方針や人権デュー・ディリジェンスなど人権尊重を含むサステナビリティ課題への取り組みについて解説した研修資料「TAISEI Sustainability Handbook」を作成し、当社及びグループ会社の全役職員に配付して人権方針等を周知するとともに、部門ごとに説明会を開催する等により浸透を図っています。
また、一人ひとりの役職員が人権方針への理解を深め、人権を尊重した事業活動を実践することができるように、毎年、全役職員を対象としたeラーニングによる研修を行うとともに、社員の階層別・部門別教育体系に人権研修を組み込み、国際的な人権問題や同和問題をはじめ、障がい者、LGBTQ、ハラスメントなど様々なテーマで集合研修を実施しています。
更に、各部門に設けた人権侵害の相談窓口となっている担当者を対象とした専門家によるオンライン研修、管理職以上の役職員を対象とした研修用動画視聴によるパワーハラスメントやいじめの防止・事案対応のための研修、新任の人権啓発推進委員を対象とした東京人権啓発企業連絡会主催の人権啓発担当者研修会への参加など、役職員に対する人権尊重のための様々なトレーニングを実施しています。
加えて人権尊重のための「人権のしおり」、および、障がい者支援のための「ハッピー・コミュニケーションガイドブック」の全役職員への配布、人権標語・エッセーを毎年募集し優秀作品を表彰するなど、様々な人権啓発活動も継続して行っています。
実績報告
年度 | 実施事項 |
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2022年度 |
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2021年度 |
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2020年度 |
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人権デュー・ディリジェンスの実施
大成建設グループは、人権尊重の責任を果たし、事業活動による人権への負の影響を予防・軽減するために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」や日本政府の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」等に基づき、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、継続的に実施しています。
建設・不動産『人権デュー・ディリジェンス推進協議会』への参加
大成建設は、デベロッパーとゼネコン各社が業界の枠を超えて設立した「建設・不動産『人権デュー・ディリジェンス推進協議会』」に参加しています。人権尊重の責任を果たすために、人権デュー・ディリジェンスに関する取り組み内容の共有、先進事例の調査・研究を行っています。
人権課題に関するステークホルダーとの対話
大成建設グループは、人権方針に基づき、大成建設グループの事業活動が人権に及ぼす影響について、外部の専門機関等による知識を活用し、ステークホルダーとの対話・協議を適宜実施して人権尊重の取り組みを進めています。2023年度は、外部有識者とサステナビリティ経営推進本部長との対談を実施し、当社グループの人権尊重に向けた取り組みについて、評価とご意見をいただきました(対談内容は下記リンク参照)。
また、人権方針に、建設業界における顕著な人権問題として、特に外国人労働者への人権侵害の禁止を徹底することを定め、脆弱な立場にある外国人労働者の人権の尊重に力をいれています。昨年に引き続き、2023年度は、外国人技能実習生へのインタビュー及び実習生を受け入れている事業主へのヒアリングを実施しました。
更に、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」等に則った人権デュー・ディリジェンスの一環であるサプライヤー(1次および2次)への訪問・監査において、事業主との意見交換やベストプラクティスの共有を実施しています。
これらを通じて、大成建設グループの事業活動が人権に与える負の影響を把握し、その防止・軽減に継続的に取り組むとともに、人身売買や児童労働・強制労働の禁止、同一労働・同一報酬、移民労働などに関する法令を遵守して人権尊重に努めています。