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統合的な環境経営情報開示
CN|カーボンニュートラル
CE|サーキュラーエコノミー
NP|ネイチャーポジティブ
従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式によって、豊かな生態系や資源が損なわれ、気候変動が引き起こされています。これを見直し、GHG排出を減らし気候変動の影響を抑えるカーボンニュートラル、資源の採取を最小限にとどめ、限りある資源を持続可能な形で利用する経済の仕組みであるサーキュラーエコノミー、健全な生態系を維持・回復して自然と人間が共生するネイチャーポジティブの実現を目指す取組が、地球規模で進められています。
このような背景から、企業には事業活動が自然に対して及ぼす影響および、自然から受ける影響に関して情報開示するとともに、事業を通じて環境課題の解決に取り組むことが求められています。
大成建設グループは「人がいきいきとする環境を創造する」という経営理念のもと、「持続可能な環境配慮型社会の実現」をマテリアリティの1つとし、「脱炭素社会|カーボンニュートラル」「循環型社会|サーキュラーエコノミー」「自然共生社会|ネイチャーポジティブ」に向けた取り組みを進めています。
ここでは「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」の4本柱で、大成建設グループの環境経営に関する情報を統合的に開示します。
なお、脱炭素社会については「TCFDフレームワーク」など、循環型社会については経済産業省・環境省の「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」など、自然共生社会については「TNFDフレームワーク」などを参照しています。
環境方針
気候変動をはじめとする環境問題に起因する経営環境の変化や社会的要請を踏まえて、大成建設グループは2023年3月に「環境方針」を改定しました。「持続可能な環境配慮型社会の実現」を目指すこと、グループ長期環境目標の達成を責務とすること、事業を通じて脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現に貢献することを基本的な考え方としています。
環境方針(抜粋)
- 基本的な考え方
大成建設グループは「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念およびサステナビリティ基本方針のもと、自然との調和の中で、建設事業を中核とした企業活動を通じて良質な社会資本の形成に取り組んでいる。
建設業を中核とした企業グループとして、環境課題を重要なサステナビリティ課題と捉え、事業活動が環境に及ぼす影響と環境から受ける影響を十分に認識し、「持続可能な環境配慮型社会の実現」を目指す。
そのために、環境関連法令等を遵守し、グループ長期環境目標を達成することを責務とする。また、気候変動をはじめとする環境関連の「リスクと機会」を的確に抽出し、環境関連技術・サービスの開発と普及を進め、事業を通じて脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現に貢献する。 - グループ長期環境目標
大成建設グループは、基本的な考え方に示す「持続可能な環境配慮型社会の実現」に向けて、グループ長期環境目標(「TAISEI Green Target 2050」)を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の3つの社会、および「森林資源・森林環境」「水資源・水環境」の2つの個別課題に対する「責務」「事業を通じた貢献」「取り組み」を定め、サプライチェーン全体でステークホルダーと共に環境目標の達成に取り組む。 - 環境デュー・ディリジェンスの継続的な実施
基本的な考え方に示す「持続可能な環境配慮型社会の実現」に向けて、「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」などの国際基準に則り、環境デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、継続的に実施する。運用にあたり、適宜見直し・改善を図る。
大成建設グループの事業活動が環境に及ぼす影響について、外部の専門機関等による知識を活用し、ステークホルダーとの対話・協議を適宜実施するよう努める。
グループ長期環境目標 TAISEI Green Target 2050ー持続可能な環境配慮型社会の実現ー
「持続可能な環境配慮型社会」の実現に向けて、グループ⻑期環境⽬標「TAISEI Green Target 2050」を定め、「3つの社会」の実現と、「2つの個別課題」の解決を⽬指しています。
3つの社会
2030年目標 | 2050年目標 | ||
---|---|---|---|
脱炭素社会 | CO2排出量(2022年度比) | CN|カーボンニュートラルの実現・深化
|
|
|
|||
循環型社会 |
|
CE|サーキュラーエコノミーの実現・深化
|
自然共生社会 |
ネイチャーポジティブに貢献する、
|
NP|ネイチャーポジティブの実現・深化
|
2つの個別課題
目標 | |
---|---|
森林資源・ 森林環境 |
|
水資源・水環境 |
|
ガバナンス
会議体
環境関連課題を含むサステナビリティ経営に関する議案を審議する会議体として、取締役会委員会である「サステナビリティ委員会」と経営会議の諮問機関である「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。「サステナビリティ委員会」ではESG全般に関する重要な⽅針や施策を、「サステナビリティ推進委員会」ではサステナビリティ経営に関する基本⽅針や中⻑期⽬標を審議しています。サステナビリティ委員会は多様な視点を取り入れるために社外取締役を委員長とし、代表取締役社長を含む取締役5名(うち社外取締役2名)で構成されています。大成建設グループの環境課題対応に係る重要事項はこれら会議体での審議を経て取締役会で審議・決定されています。
取締役会で審議・決定された議案は、当社の各事業部⾨及びグループ各社に伝達され、それぞれの経営計画・事業運営に反映されています。また、その内容は建設作業所における具体的な実施事項に織り込まれ、取引先にも協⼒を要請します。
サステナビリティ関連ガバナンス体制図
サステナビリティ関連課題の業務執⾏責任者
環境関連課題を含むサステナビリティ経営推進の責任を明確化するため、CSuO(Chief Sustainability Officer 最高サステナビリティ責任者)を置いています。CSuOは取締役会で決定したサステナビリティ関連課題への取り組みを含む業務執行におけるサステナビリティ経営の推進に関する責任を負っています。またCSuOはサステナビリティ推進委員会の副委員長も担っています。
取締役会における最近の主な環境経営関連審議状況
- 2023年 7月 中計進捗状況報告(2022年度第4四半期)サステナビリティ関連の状況報告
- 8月 環境DD優先対応リスクの選定
- 8月 統合レポート2023の発⾏
- 12月 TNFD提⾔への賛同(Early Adopter登録)
- 2024年 5月 【TAISEI VISION 2030】達成計画
統合的な環境経営情報開⽰
戦略
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」に関する「リスクと機会」には、気温上昇や自然資本の棄損、資源の枯渇を避けるための規制の強化や市場の変化といった「移行」に起因するものと、気温上昇や自然資本の棄損、資源の枯渇の結果として生じる急性・慢性的な異常気象や海面上昇といった「物理的変化」に起因するものが考えられます。
この環境・社会の変化に柔軟に対応した経営戦略を立案するため、2030年を想定して「リスクと機会」を抽出し、大成建設グループの事業への影響を評価しました。そこから取組方針を立案し、経営戦略に反映しています。
なお、気候変動に関する「リスクと機会」の抽出には、複数の気候変動シナリオを参照しました。
参照した気候変動シナリオ
移行 シナリオ |
国際エネルギー機関(IEA) 「発表誓約シナリオ Announced Pledges Scenario(APS)」…2℃未満シナリオ 「ネットゼロロードマップ Net Zero Roadmap: A Global Pathway to Keep the 1.5℃ Goal in Reach」…1.5℃シナリオ |
---|---|
物理的変化 | 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 「代表的濃度経路シナリオ(RCP8.5)」…4℃シナリオ |
シナリオ分析結果
脱炭素社会
気候変動やそれに起因する⾃然災害等が頻発、かつ甚⼤化し、私たちの住まいや暮らしの安全・安⼼が脅威にさらされています。こうした変化は、京都議定書からパリ協定の採択と続く脱炭素の⼤きな流れとなり、⽇本を含め世界中の国々の政策に⼤きく影響を及ぼすとともに、企業の果たす役割にも期待が⾼まっています。
⼤成建設グループは、気候変動による事業への影響を重要な経営課題の⼀つと捉え、2020年7⽉にTCFD提⾔に賛同、2021年5⽉からTCFD提⾔に則った情報を開⽰しています。
脱炭素社会への移⾏が滞り、気候変動の影響を緩和できない場合、夏季の気温上昇に起因する労働環境悪化による⽣産性の低下や担い⼿の減少、労務費の上昇や、⾃然災害の甚⼤化・頻発化に起因するサプライチェーンの混乱による建設資材価格の上昇等のリスクが当社グループに及ぶことが想定されます。また、当社グループの取り組みが⼗分でない場合には、ステークホルダーからの評価が低下し、受注機会が減少する等のリスクが想定されます。
⼀⽅で、脱炭素社会への移⾏に伴い、当社グループにおいてはZEBや再⽣可能エネルギー関連⼯事、気候変動への適応に伴う設備・インフラの強靭化需要の増加が⾒込まれます。また、当社グループが進めているゼロカーボンビル(T-ZCB®)や環境配慮コンクリート(T-eConcrete®)など低炭素・脱炭素建材の開発及び社会実装の促進は、競争優位性の確保・向上に寄与します。
当社グループにとって、脱炭素社会への移⾏は企業価値向上やステークホルダーからの評価向上につながる機会であると考えています。
- 取り組みの詳細は「脱炭素社会の実現に向けて」をご覧ください
循環型社会
従来の大量生産・大量消費・大量廃棄のリニアエコノミーから、資源の投入・消費を抑えつつストックを有効活用し、付加価値を生み出すサーキュラーエコノミーヘの移行が世界的な重要課題となっており、企業にも省資源、再生可能な資材の利用、プラスチックによる自然環境汚染への対応等、サプライチェーンも含めた持続可能な調達への取り組みが求められています。
循環型社会への移行が滞った場合、資源不足による資材価格の上昇や、廃棄物の処分費用の増加によるコスト増等のリスクが当社グループに及ぶことが想定されます。また、当社グループの取り組みが十分でない場合には、ステークホルダーからの評価が低下し、受注機会が減少する等のリスクが想定されます。
一方で、循環型社会への移行に伴い、当社グループにおいてはサーキュラーエコノミー実現に貢献する再生資源使用の拡大、土壌浄化などの環境再生事業の受注機会の増加が見込まれます。また、当社グループが進めている資源・建設資材等を有効活用する、循環利用に配慮した設計・システム・製品・技術の開発及び社会実装の促進は、競争優位性の確保・向上に寄与します。
当社グループにとって、循環型社会への移行は企業価値向上やステークホルダーからの評価向上につながる機会であると考えています。
- 取り組みの詳細は「循環型社会の実現に向けて」をご覧ください
自然共生社会
地球の持続可能性の土台かつ人間の安全保障の根幹である自然資本や生物多様性を守り活かすために、ネイチャーポジティブの実現が世界的な重要課題となっており、企業にもネイチャーポジティブ実現に寄与する取り組みが求められています。建設業は自然と密接に関係しています。鉄筋・鉄骨、セメント・コンクリート、砂、ガラス、木材など建設資材の多くが自然資本に依存しています。また土地の改変や分断などにより自然資本に負の影響を及ぼす一方で、都市環境における自然の創出などにより正の影響を及ぼしています。当社は、2022年6月にTNFDフォーラムに参加、TNFD提言に賛同し、TNFD Early Adopterとして2024年1月に公表されたリストに掲載されています。
自然共生社会への移行が滞り、自然資本の減少が継続する場合、資源不足による資材価格の上昇や、自然環境対策賦課金の増額によるコスト増等のリスクが当社グループに及ぶことが想定されます。また、当社グループの取り組みが十分でない場合には、ステークホルダーからの評価が低下し、受注機会が減少する等のリスクが想定されます。
一方で、自然共生社会への移行に伴い、当社グループにおいてはネイチャーポジティブ実現に貢献する豊かな自然環境の保全・創出やグリーンインフラの整備に関連する受注機会の増加が見込まれます。また、当社グループが進めている技術・サービスの開発及び社会実装の促進は、競争優位性の確保・向上に寄与します。
当社グループにとって、自然共生社会への移行は企業価値向上やステークホルダーからの評価向上につながる機会であると考えています。
- 取り組みの詳細は「⾃然共⽣社会の実現に向けて」をご覧ください
リスク・機会と対応策
脱炭素社会 | 循環型社会 | 自然共生社会 | 2030年の想定 | リスク・機会 | 影響度 | 対応策 |
---|---|---|---|---|---|---|
● |
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(リスク)
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中 |
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||
● |
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(リスク)
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大 |
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● |
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(リスク)
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大 |
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● |
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(リスク)
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大 |
|
||
● | ● | ● |
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(リスク)
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中 |
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● | ● | ● |
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(リスク)
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中 |
|
● |
|
(リスク)
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中 |
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||
● | ● |
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(リスク)
|
中 |
|
|
● | ● |
|
(リスク)
|
中 |
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TSA(TAISEI Sustainable Action®)
~グループ全社員が参加する環境負荷低減活動~
当社グループは、グループ環境目標達成のために、グループ全社員が参加する環境負荷低減活動TSA:TAISEI Sustainable Action®に取り組んでいます。環境負荷低減に効果のある技術や活動など具体的な取り組みをまとめた「TSAアクションリスト」の作成、活動効果を見える化・定量評価する「TSAポイントシステム」の導入、原則すべての作業所が取り組む「重点実施項目」の設定、先進的な取り組みである「政策的実施項目」を実施する作業所の指定などにより、社員の意識改革と行動変容や、作業所でのスコープ1+2の削減につなげています。またTSAの普及促進と具体的な活動の水平展開を目的として「TSA通信」を四半期ごとに配信しています。
また、環境目標の達成に向けた取り組みに関する表彰制度を設けており、他の部門の模範となる環境負荷低減活動を評価し、社員の環境に対する意識の向上に努めています。
TSA2024-2026 主な重点実施項目
標準実施項目
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新規実施項目
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TSA2024-2026 主な政策的実施項目
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BIMを⽤いた建築物新築時 CO2排出量予測システム
「T-CARBON BIM シミュレーター」を開発
~設計段階で調達・施⼯時の CO2排出量を短時間に⾼精度で算出~
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、建設・不動産分野では建築物新築時の調達・施⼯・解体等で排出される CO2排出量「エンボディドカーボン※1」の削減が求められています。このうち、調達・施⼯時の CO2排出量「アップフロントカーボン※2」を把握するには、建築物に使⽤する建材ごとの CO2排出量を、建材それぞれの使⽤数量を基に算出する必要があります。しかし、建材の種類が多岐にわたることから、⼯事規模が⼤きい場合などにはCO2排出量の算出に数カ⽉かかるなど、多⼤な時間と労⼒を要していました。
そこで当社は、BIMデータを活⽤し設計段階におけるアップフロントカーボンを容易に把握することができるシステム「T-CARBON BIM シミュレーター」を開発しました。本システムを適⽤してBIMから算出した建材の種類ほか壁・扉の枚数などの詳細な数量データと、アップフロントカーボンを正確に予測する既存の当社独⾃開発システム「T-CARBON® Navios※3」とを連携させることで、建材ごとのCO2排出量を短時間でより⾼精度に予測することが可能となります。
- ※1エンボディドカーボン:建築物のライフサイクルで発⽣する CO2排出量のうち、資材製造~施⼯~使⽤(維持・修繕等)~解体の段階に該当する排出量を⽰す。
- ※2アップフロントカーボン:建築物建設時の建材の製造・調達および施⼯時に発⽣するCO2排出量を⽰す。
- ※3T-CARBON® Navios:調達段階では使⽤建材ごとのCO2排出量を短時間で正確に把握することで、より効果的なCO2排出量削減策の検討が⾏え、施⼯段階では施⼯時のCO2排出量削減計画の検討にも活⽤が可能な当社独⾃開発システム。
⽇本版建設物資源循環データプラットフォーム構築に着⼿
~サーキュラーエコノミーの先進国オランダのMadaster社と提携~
資源枯渇に伴う調達リスク等の増⼤、廃棄物処理の課題などを背景に、製品・⽣産・事業などのライフサイクル全体で資源の効率的・循環的な利⽤や、業界・企業に関わらず動静脈連携※1 によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環の推進等が求められています。
⼀⽅、建設物に使⽤される建材・設備等は、鉄・コンクリート・⽊質等の構造部材やガラス、⽯こうボード、空調・衛⽣設備部材など多種多様であることに加え、調達、施⼯、運⽤・維持管理、解体まで建設物のライフサイクルは⻑期間にわたり、各建材・設備等の交換時期はそれぞれ異なっているため、サーキュラーエコノミーの観点から建設物のライフサイクル全体で使⽤される建材・設備等を統合して管理する仕組みづくりが急務となっています。
そこで当社は、オランダに本社を置くMadaster社が、建材・設備毎の環境インパクトを数値化した資源循環データベースに基づき開発したMadasterプラットフォームを活⽤し、⽇本版の建設物資源循環データプラットフォームの構築に着⼿することとしました。今回試⽤するMadasterプラットフォームは、建物や橋など建設物のCAD(BIM/CIM)データと、資材仕様等に関するExcelデータを連携させることにより、建設物のライフサイクル全体で使⽤される各建材・設備および建設物全体でのサーキュラリティ※2 等の数値化やCO2排出量を算出し、⾒える化することが可能です。設計段階から資源循環性が⾼く、CO2削減にも配慮した建設物のライフサイクルを踏まえた効率的な計画策定を可能とし、解体時には建材ごとに再資源化の程度も予測させることができ、建設物のマテリアルバンク※3 としての機能を付与する可能性も期待されます。
- ※1動静脈連携:製造・流通など資源を供給する動脈企業と消費・使⽤された廃棄物の回収・選別・リサイクルを⾏う静脈企業による連携のことで、サーキュラーエコノミーの実現に向けて物のライフサイクル全体での資源循環を推進するために必要となる仕組み。
- ※2サーキュラリティ:「リサイクル材使⽤率」および「解体時にリサイクル可能性のある材料の割合」と「⻑寿命指標」から算出される本プラットフォーム独⾃の数値。循環性。
- ※3建設物のマテリアルバンク:建設物を資源の貯蔵庫(バンク)と捉えた概念。
ネイチャーポジティブ評価⼿法の開発に着⼿
~建設事業による⾃然環境への影響を定量的に評価~
建設業は⾃然と直接対峙し⾃然を改変することを伴う産業です。また、建設資材の使⽤など⾃然資本に依存しており、⼟地の改変などにより⾃然資本に負のインパクトを、⾃然環境の保全・創出などにより正のインパクトを与えています。当社グループは⾃然共⽣社会の実現を⽬指すにあたり、2050年⽬標として「建設事業に伴う負の影響の最⼩化と、⾃然と共⽣する事業による正の影響の最⼤化による、ネイチャーポジティブの実現・深化」を掲げています。
この⾃然環境への正と負の影響を、⾃然によって⽣み出される資源のストックである⾃然資本への配慮や経済的要素などの観点から定量的に評価する「ネイチャーポジティブ評価⼿法」の開発に着⼿しました。⾃然資本評価の分野で多数の研究実績と知⾒を有する九州⼤学⾺奈⽊俊介教授と協⼒し、建設事業に特化した、客観的に実証された評価⼿法の確⽴を⽬指しています。
本評価⼿法の特徴
- 1.建設プロジェクトが⾃然資本に与える影響を定量的に把握
- 2.⼊⼒項⽬をシンプルにすることでより多くの⼯事に適⽤
- 3.お客様のネイチャーポジティブ関連情報開⽰⽀援に活⽤
この評価⼿法を活⽤して建設事業が⾃然資本に与える影響を適切に把握・評価することで、建設業におけるネイチャーポジティブ実現に向けた取り組みを推進していきます。
TNFD(⾃然関連財務情報開⽰タスクフォース)提⾔に基づく情報開⽰への適⽤
本評価⼿法により建設プロジェクトが地域に与える影響を定量評価することは、TNFD提⾔で情報開⽰が求められている優先地域*の特定と評価に活⽤できると考えています。
*優先地域(TNFDでの定義)
優先地域とは、以下のいずれかの場所を指す。 重大な地域直接操業および上流と下流のバリューチェーンにおいて、組織が重大な自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定した場所、および/または 要注意地域組織の直接操業、および可能であれば上流と下流のバリューチェーンの資産および/または活動が、以下の地域において自然と接する場所
出所:自然関連財務情報開示 |
環境関連研究開発投資
⽇本政府の⽬標「2030年に新築される建築物についてZEB基準の⽔準のエネルギー性能が確保されていることを⽬指す」の実現に向けて、ZEB建物の需要が今後増加していくことが予想されています。また環境配慮コンクリートや⽊質建築などの低炭素・脱炭素建材の需要が今後増加することも予想されています。
市場の拡⼤が予想される中、積極的な研究開発投資を⾏うことで競合するゼネコン他社や建材メーカーに開発⾯で先⾏し、市場確保を図ります。
投資実⾏状況・投資計画
中期経営計画(2021-2023)
前中期経営計画においては、3ヵ年の環境関連投資額を600億円、そのうち420億円を、経済と環境の好循環により成⻑が期待される産業分野に貢献する技術開発および競争優位性のある技術開発に投資することとしていました。実際には、期間中に約520億円の投資を実行しました。
主な環境関連投資実績
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中期経営計画(2024-2026)
現中期経営計画においては、3ヵ年の環境関連投資額を750億円、そのうち600億円を社会・環境課題に対応する技術開発、150億円を再生可能エネルギーに投資することとしています。
主な環境関連投資計画
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なお環境関連投資資⾦については、サステナビリティ・リンク・ローンやグリーンボンドを活⽤しており、今後は新しく策定したサステナビリティファイナンス・フレームワークに準拠したファイナンスも活⽤していきます。
インターナルカーボンプライシング(ICP)
2021年に、下記3点の効果を期待してインターナルカーボンプライシング制度を導⼊しました。
期待する効果
- 1.ICP制度の導⼊によってCO2排出削減量が⾦額換算されることで、脱炭素に寄与する投資や施策の成果・効果を可視化
- 2.脱炭素に寄与する取り組みへのインセンティブや投資判断の指針として活⽤することで、脱炭素に寄与する設備投資、技術開発、環境負荷低減活動が促進され、その結果カーボンニュートラルの達成に向けた取り組みを加速
- 3.カーボンプライシングの潜在的な影響を認識し、炭素税等の導⼊に備えた準備
ICP価格
国際エネルギー機関(IEA)の「Net Zero by 2050(NZE)」等を参考に、2026年までは11,000円とし、以降2050年まで逓増する設定としています。
~2026年 | 2030年 | 2040年 | 2050年 | |
---|---|---|---|---|
ICP価格(1t-CO2あたり) | ¥11,000 | ¥20,000 | ¥29,000 | ¥35,000 |
リスクマネジメント
推進体制
リスクマネジメント⽅針、リスクマネジメント基本規程のもと、全社的に体系化されたリスクマネジメントシステムを確⽴し、取締役会の監督のもとに、品質、コンプライアンス、情報、安全、環境等のESGに関する主なリスクにも対応する適切な管理体制を整備しています。
全社的リスクマネジメントの推進
事業運営に伴うリスクを適切に把握・管理するリスクマネジメント体制の継続的な運⽤に努めており、代表取締役社⻑を「最⾼責任者」、管理本部⻑を「CRO(Chief Risk Management Officer)」とするリスクマネジメント体制を構築しています。毎年、当該年度に顕在化したリスクを踏まえ、翌年度のリスク管理内容を⾒直すことでPDCAサイクルを運⽤するとともに、リスクマネジメント体制の有効性を検証しています。
事業等のリスク
企業経営に重⼤な影響を及ぼす可能性があるリスクについては、経営会議及び取締役会に報告され、当該リスクへの対処⽅針を総合的に検討・決定し、有価証券報告書の「事業等のリスク」で報告しています。環境経営関連では「環境法規制違反リスク」および「気候変動等環境課題に関するリスク」を「事業等のリスク」としています。
気候変動等環境課題に関するリスク
【TAISEI VISION 2030】達成計画・中期経営計画(2024-2026)の策定プロセスの中で各部⾨の事業に関する気候変動等環境課題に関するリスクの洗い出し及び事業への影響度の分析と対応策を検討し、取締役会での決議を経て、経営戦略に反映させています。
また、それらのリスクは、国際規格ISO14001に基づいた環境マネジメントシステム(EMS)において評価・特定されているリスクと整合しています。
事業等のリスク(2024年3月期有価証券報告書より抜粋)
環境法規制違反リスク |
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想定されるリスク 当社グループの建設作業所等において環境関連法規に違反した場合には、刑事罰・行政処分・損害賠償請求等を受けるリスクが生じます。 リスクへの対応 EMS(環境マネジメントシステム)を制定・運用するとともに、 環境パトロールによりその遵守状況をチェックしております。 |
気候変動等環境課題に関するリスク |
想定されるリスク 企業には事業を通じて気候変動問題等環境課題の解決に取り組むことが求められており、その取り組みや情報開示が不十分な場合には、企業競争力及びステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。 リスクへの対応 環境方針に掲げる「持続可能な環境配慮型社会の実現」に基づき、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を定め、3つの社会(脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会)の実現と、2つの個別課題(森林資源・森林環境、水資源・水環境)の解決を目指しております。更に環境方針に基づく環境デュー・ディリジェンスを実施し、当社グループの事業活動が環境に及ぼす負の影響、及び当社グループの事業活動が環境から受ける負の影響に対する予防・軽減等を、 サプライチェーンも含め進めております。 最大の課題であるカーボンニュートラルの実現に向けては、グループ全体で環境負荷低減活動(TSA:TAISEI Sustainable Action®)に取り組み、スコープ1・2のCO2排出量削減を進めております。加えて、グリーン調達の推進や環境配慮コンクリート、ZEB技術の開発・普及促進等により、スコープ3のCO2排出量削減に努め、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。 これらの環境課題に対する取り組みについては、統合レポートやウェブサイト等で適切に情報開示しております。 |
指標と目標
脱炭素社会(グループ全体)
CO2排出量削減目標(2022年度比)
(総排出量:千 t-CO2|原単位:t-CO2/億円)
基準年 | 実績 | 目標 | |||
---|---|---|---|---|---|
2022年度 | 2023年度 | 2026年度 | 2030年度 | ||
スコープ1+2 | 総排出量 削減率 |
291 - |
(集計中) | 240 ▲18% |
169 ▲42% |
売上高1億円あたりの排出量 削減率 |
18.4 - |
13.5 ▲26% |
8.7 ▲53% |
||
スコープ3 カテゴリー1+11 |
総排出量 削減率 |
6,594 - |
- | 4,945 ▲25% |
スコープ1, 2, 3排出量
実績 | ||
---|---|---|
2022年度 | 2023年度 | |
スコープ1 | 216 | (集計中) |
スコープ2 | 75 | |
スコープ3 | 6,917 | |
合計 | 7,208 |
スコープ3内訳
(千 t-CO2)
実績 | ||
---|---|---|
2022年度 | 2023年度 | |
カテゴリー1 | 1,722 | (集計中) |
カテゴリー11 | 4,872 | |
その他のカテゴリー | 323 | |
合計 | 6,917 |
(2023年度実績は後日掲載)
⼤成建設グループの CO2排出
⼤成建設グループのCO2排出量の9割超がスコープ3です。また、スコープ3の中でも カテゴリー1とカテゴリー11で9割超となっています。
- カテゴリー1鉄⾻・鉄筋などの鋼材や、セメント、コンクリート等の製造に伴い排出されるCO2排出量
- カテゴリー11その年に引き渡した建物の使⽤期間中に排出すると想定されるCO2排出量
- [対象会社]大成建設(株)、大成ロテック(株)、大成有楽不動産(株)、大成ユーレック(株)、大成設備(株)、大成建設ハウジング(株)、成和リニューアルワークス(株)、(株)ジェイファスト
循環型社会(⼤成建設・単体)
2023年度 | 目標 | |||
---|---|---|---|---|
目標 | 実績 | 2026年度 | 2030年度 | |
建設廃棄物最終処分率 | 3.2%以下 | (集計中) | 3.0%以下 | 3.0%以下 |
(2023年度実績は後日掲載)
⾃然共⽣社会(⼤成建設・単体)
2023年度 | 目標 | |||
---|---|---|---|---|
目標 | 実績 | 2026年度 | 2030年度 | |
生物多様性/ネイチャーポジティブに 貢献するプロジェクトの推進 |
40件以上 | (集計中) | 50件以上 | 50件以上 |
ネイチャーポジティブ評価手法 | - | 開発開始 | 評価手法の 確立・運用開始 |
設計施工PJの うち30%に適用 |
(2023年度実績は後日掲載)
TNFDの中核開⽰指標
TNFD提⾔によると、まず⾃社にとっての優先地域を特定し、そのうえで当該特定地域に関する指標を開⽰することが求められています。当社は提⾔に則って優先地域の特定を進め、TNFDが求める指標の開⽰を検討してまいります。
なお、当社WEBサイト内で下記項⽬を含む環境データを開⽰しております。
マテリアルフロー | INPUT | エネルギー、主要建材・資材、水 |
OUTPUT | CO2(スコープ1,2,3)、NOX、SOX、フロン、建設副産物、水 | |
建設副産物排出量(廃棄物・有価物) | 建設副産物排出量、種類別排出量、最終処分量、リサイクル量・率 | |
有害物質の管理 | 有害廃棄物、PCB廃棄物、揮発性有機化合物 |
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