人権の尊重
方針・基本的な考え方
大成建設グループは、「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、グループ行動指針において「基本的人権・多様性の尊重」を掲げ、人権尊重のための取り組みを推進しています。
人権方針において、人権尊重の責任を果たすという当社グループの姿勢を社内外に明確にコミットし、事業活動に関連して人権への負の影響を生じさせないよう、自主的・積極的・能動的に企業としての責任を果たすことにより、包摂的な社会の実現に貢献することを、人権尊重に対する基本姿勢として定めています。
また、個人の基本的人権及び多様性を尊重し、人種、国籍、宗教、性別、性的指向・性自認、年齢、社会的身分、障がいや傷病の有無、身体的特徴等を理由とした差別、ハラスメント、プライバシー侵害等人権を侵害するあらゆる行為を禁止することを規定しています。
更に、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、事業活動を行う国または地域における人権関連の法令を遵守するとともに、世界人権宣言を含む国際人権章典等の国際人権基準を支持・尊重し、国際人権基準と各国・地域の法令等の間に矛盾がある場合は、国際的に認められた人権を最大限尊重するための方法を追求することとしています。
このような当社グループの人権尊重に関する方針及び基本的な考え方を、従業員には研修やeラーニングにより、取引先には研修や取引開始時のセルフアセスメント実施依頼のメールにより、お客様や株主・投資家・取引先・ビジネスパートナーを含む全てのステークホルダーに対しては統合レポート等により明確に伝達し、方針の支持と人権を尊重した活動を推進しています。
リスクと機会
リスク |
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機会 |
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ポリシー/コミットメント
- グループ行動指針:風通しの良い企業風土の形成、働きやすい職場の確保、基本的人権・多様性の尊重
- 人権方針
- 人材活用方針(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン方針)
- 【TAISEI VISION 2030】達成計画 事業基盤の整備方針 サステナビリティ戦略(人権)
目標
【TAISEI VISION 2030】達成のための取り組み
基本方針:当社グループの事業に携わる一人ひとりの人権を尊重する
長期目標
- 当社グループのサプライチェーンにおける人権侵害ゼロ
KPI
- サプライヤーのサステナビリティ活動状況確認率
2026年度 単体100%、2030年度 グループ100%
イニシアチブ
国連グローバル・コンパクト(UNGC)・SDGs
大成建設グループは、2018年4月にUNGCに参加して人権、労働、環境、腐敗防止の4分野10原則の実践に努めていくことをコミットしています。
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)が主催するサプライチェーン分科会、ヒューマンライツデューディリジェンス(HRDD)分科会、環境経営分科会、人権教育分科会、レポーティング研究分科会等の各種分科会へ積極的に参加し、建設業としてSDGsへ貢献を意識して事業を推進していけるよう、社内へのSDGsの浸透を図るとともに、中期経営計画に反映させています。
また、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」や「子どもの権利とビジネス原則」、「世界人権宣言」を含む国際人権章典、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」等の国際人権基準を支持・尊重しています。
- Myじんけん宣言(法務省)
- ISO26000
体制・システム
人権に関する取り組みの推進体制
大成建設では、人権を重要なサステナビリティ課題のひとつと捉え、取締役会委員会であるサステナビリティ委員会の監督責任のもと、コンプライアンス委員会、人事委員会等が連携して人権尊重のための様々な取り組みを進めています。
日常的な人権尊重及び人権への負の影響の防止・軽減については、CSuOであるサステナビリティ総本部長を責任者として、サステナビリティ経営推進本部が他部署・人権啓発推進委員会・人権デュー・ディリジェンス分科会と連携して人権デュー・ディリジェンスや人権啓発活動に取り組み、改善と向上に努めています。
機関 | 活動内容 |
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サステナビリティ委員会 (取締役会委員会) |
-人権尊重の取り組みを監督する役割を担っており、人権に関わる重要事案及び人権デュー・ディリジェンスの仕組み変更については、経営会議を経てサステナビリティ委員会にて事前審議を行い、取締役会に付議・報告されています。グループ行動指針の改定、人権に関する方針の改定を行っています。 |
コンプライアンス委員会 (特別委員会) |
-社長の諮問にこたえる特別な委員会として、社外有識者(弁護士)を委員長とするコンプライアンス委員会を設置しています。委員会では、ハラスメント防止や差別禁止を始めとするコンプライアンスの徹底について審議し、人権侵害の防止に努めています。 |
人事委員会 (業務委員会) |
-人事諸施策の立案、実施状況のモニタリング、フォローに関する審議を行い、内容に応じて経営会議や取締役会に付議しています。委員会では、人材活用方針(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン方針)の遵守状況やエンゲージメントサーベイ結果への対策、従業員の人権に関する事項についても審議を行い、に努めています。 |
サステナビリティ推進委員会 (業務委員会) |
-重要な環境・社会課題を審議し、サステナビリティ経営への取り組みに関する情報の共有及び経営会議への提言を行うことを目的としてサステナビリティ推進委員会を設置しています。環境問題に関する分科会を設置するほか、様々な人権問題に係る課題に対応するために下部組織(人権啓発推進委員会・人権デュー・ディリジェンス分科会)を設置しています。 環境問題に関する分科会はこちら |
人権啓発推進委員会 (サステナビリティ推進委員会・分科会) |
・CSuOを本社委員長とした、本社委員会及び支店ごとの支店委員会から構成され、人権課題に対する基本方針・施策等を議論の上、研修をはじめとする人権啓発活動を計画し、継続的な人権意識向上のための活動を推進しています。 |
人権デュー・ディリジェンス分科会 (サステナビリティ推進委員会・分科会) |
当社従業員WGと、サプライチェーンWGの2つのWGを設けて、
個別課題に取り組んでいます。
<当社従業員WG>
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取り組み
人権デュー・ディリジェンスの継続的な実施
⼤成建設グループは、⼈権尊重責任を果たすために、2022年4⽉に⼈権⽅針を改定し、国連「ビジネスと⼈権に関する指導原則」や⽇本政府の「責任あるサプライチェーン等における⼈権尊重のためのガイドライン」等に基づき、⼈権デュー・ディリジェンス(以下「人権DD」)の仕組みを構築し、継続的に取り組みを実施しています。実施にあたっては、取引先と協⼒して、サプライチェーン全体で⼈権尊重のための取り組みを進めています。
実施状況については、定期的に経営会議で確認・審議した上でサステナビリティ委員会及び取締役会に報告し、モニタリングを受けています。各施策の実施及びステークホルダーとの対話等から得られた気づきを活かして、仕組み・施策を⾒直し、継続的に改善を図りながら、取引先とともに⼈権尊重のための取り組みを深化させていきます。

(1)人権尊重に関するコミットメント(国連指導原則16)
2015年に制定した人権方針を、2022年4月に改定し、人権尊重の責任を果たすという当社グループの姿勢を社内外に明確にコミットしました。事業活動に関連して、人権への負の影響を生じさせないよう、自主的・積極的・能動的に企業としての責任を果たすことにより、包摂的な社会の実現に貢献することを人権尊重に対する基本姿勢としています。また、人権尊重の責任を果たすために、人権デュー・ディリジェンスに取り組むことを定めています。
この方針は、Webサイト等で開示しており、お客様や取引先を含むビジネスパートナーに対しても同方針の支持と人権の尊重を求めています。
(2)人権への負の影響の特定・評価(国連指導原則18)
当社グループの全ての既存及び新規事業における人権への負の影響を特定・評価するために、外部専門家である㈱SOMPOリスクマネジメントの指導・助言のもと、サステナブル調達協議会(現在は、人権デュー・ディリジェンス分科会)に人事部門・国際部門を加えたメンバーにより、人権に関する国際的ガイダンス(UNEP FI:国連環境計画・金融イニシアチブ Human Rights Guidance Tool)に基づき、産業全般に共通する人権への負の影響(人権リスク)と建設業及び当社グループに特有の人権リスクを抽出しました。
抽出した人権リスク(差別・ハラスメント、長時間労働、健康と安全、賄賂と腐敗、移民労働(外国人労働者)、児童労働、強制労働等)について、「人権への影響(深刻度、影響の受ける人数、救済可能性、発生可能性)」及び「自社との繋がり」という2つの側面から定量的に分析・評価して、サステナビリティ委員会及び取締役会の審議を経て、「優先的に対応する人権課題」を特定しました。
特定した優先的に対応する人権課題について、負の影響の防止・軽減、実効性の評価等の具体的方策を定め、取り組みを進めています。
(3)負の影響の防止・軽減(国連指導原則19)
当社及びグループ会社の従業員に関する優先課題については、各課題を主管する本部が中心となり様々な対策を実施することによって防止・軽減を図っています。また、CSuOを委員長とする人権啓発推進委員会による啓発活動を通じて、人権尊重に関する役職員の理解を深めるよう努めています。
更に、全役職員を対象とした人権に関するeラーニングを定期的に実施し、人権尊重意識の向上に繋げています。
サプライチェーンにおける優先課題については、サステナビリティ経営推進本部及び関連する部門(土木・建築・調達・安全)の管理職によって構成される人権デュー・ディリジェンス分科会サプライチェーンWGにおける検討のもと防止・軽減策をサステナブル調達ガイドラインに反映し、取引先と協働して防止・軽減に努めています。取引先への確実な浸透を図るために、「大成建設グループサステナビリティハンドブック」を発行・配付し、安全徹底大会の場を利用した研修、取引先向けのeラーニングの実施等の啓発活動を継続的に実施しています。
顧客・顧客の従業員、地域社会の住民に関する優先課題については、各課題を主管する本部が中心となり防止・軽減策を講じています。
(4)取り組みの実効性の評価(国連指導原則20)
当社及びグループ会社の従業員に関する優先課題への取り組みについては、各種委員会によるモニタリング、全社リスクマネジメントに基づく確認・改善、アンケートやエンゲージメントサーベイ等により、実効性を評価しています。
サプライチェーンにおける優先課題への取り組みについては、その実効性を評価するために、毎年取引先によるアンケート形式のセルフアセスメントを実施し、その結果に応じて、訪問監査や改善のための意見交換を行っています。
また、建設業界においても人権への負の影響を受けやすい外国人労働者に関して人権侵害の防止・軽減を図るために、上記のセルフアセスメントに加えて、外国人技能実習生を雇用している事業主に対する受け入れ状況の調査を行っています。更に、毎年度定期的に外国人技能実習生に直接インタビューをして人権への負の影響が生じていないか確認に努めています。
顧客・顧客の従業員、地域社会の住民に関する優先課題への取り組みについては、全社リスクマネジメント等により実効性を評価しています。
(5)説明・情報開示(国連指導原則21)
人権デュー・ディリジェンスの実施状況については、定期的に経営会議に報告するとともに、Webサイトや統合レポート等で適時適切に開示しています。
2023年4月より、人権デュー・ディリジェンスの対象について、従来の「専門工事業者の労働者」「取引先の労働者」「地域社会」に加え、「当社・グループ会社の従業員」及び「顧客または顧客の従業員」を追加し、人権への負の影響の防止・軽減に努めました。
2024年8月の経営会議において、2023年度に各優先対応人権課題に対して実施した取り組み及びその実効性の評価結果を報告し、今後の課題及び対応を審議しました。
実効性評価の結果として、当社・グループ会社の従業員における「長時間労働」については、総労働時間縮減に向けた施策の実施により改善が見られるものの、目標とする健康管理残業時間 年720時間超過者ゼロには至りませんでした。また、「差別・ハラスメント」についても、依然として事案が発生していることから、これらを喫緊の課題と認識し、全社を挙げてその改善・撲滅に努めています。
専門工事業者及び取引先(以下、取引先)の労働者においては、調査した範囲では直ちに対応が必要となる人権侵害は認められませんでした。一方で、取引先へのヒアリングでは、人手不足や2024年度から建設業に適用された時間外労働上限規制を背景とする「長時間労働」への対応を要望する声が多く聞かれました。長時間労働の是正は建設業界全体に関わる重要な課題との認識のもと、引き続き施工の効率化、省人化、適正工期の確保等に向けた取り組みを進めていきます。
また、取引先の労働者の中でも、脆弱な立場に置かれ得る外国人技能実習生を含む外国人労働者においては、人権への負の影響が生じないよう特に注意が必要という認識のもと、取引先の労働者全般における優先対応人権課題に対し、引き続きアンケート形式のセルフアセスメント、事業主ヒアリング、外国人技能実習生インタビュー等を毎年定期的に実施し、問題の「見える化」に注力して、実効性のある対応に繋げていきます。
(6)救済(国連指導原則22)
人権侵害に関する各種相談窓口を設け、外国人労働者を含む社内外の全てのステークホルダーからの相談に対応しています。万一、大成建設グループが人権への負の影響の原因となった、あるいは助長したことが判明した場合は、人権方針に則り、適切な手段により速やかにその救済と是正に取り組みます。対応する相談窓口を社内外に周知し、救済・是正の実効性を高めるための体制を整備・運用しています。
(7)ステークホルダーとの対話
当社グループは、人権方針に基づき、当社グループの事業活動が人権に及ぼす影響について、外部の専門機関等による知識を活用し、ステークホルダーとの対話・協議を適宜実施して人権尊重の取り組みを進めています。
人権方針に、建設業界における顕著な人権問題として、特に外国人労働者への人権侵害の禁止を徹底することを定め、脆弱な立場にある外国人労働者の人権の尊重に力をいれています。昨年に引き続き、2023年度は、外国人技能実習生へのインタビュー及び実習生を受け入れている事業主へのヒアリングを実施しました。
更に、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」等に則った人権デュー・ディリジェンスの一環であるサプライヤー(1次及び2次)への訪問・監査において、事業主との意見交換やベストプラクティスの共有を実施しています。
また、サステナビリティ総本部の幹部が外部有識者と対談を行い、得られた気づきを人権尊重の取り組みの深化に活かしています。
これらを通じて、当社グループの事業活動が人権に与える負の影響を把握し、その防止・軽減に継続的に取り組むとともに、人身売買や児童労働・強制労働の禁止、同一労働・同一報酬、移民労働等に関する法令を遵守して人権尊重に努めています。
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外部有識者(NPO)との対談 -
取引先訪問、1次・2次取引先 -
外国人技能実習生のインタビュー
(8)その他
建設・不動産『人権デュー・ディリジェンス推進協議会』への参加
当社は、デベロッパーとゼネコン各社が業界の枠を超えて設立した「建設・不動産『人権デュー・ディリジェンス推進協議会』」に参加しています。人権尊重の責任を果たすために、人権デュー・ディリジェンスに関する取り組み内容の共有、先進事例の調査・研究を行っています。
事業プロセス上の人権への負の影響の確認・評価
2024年より、事業プロセスの一環として、入手対応案件に関する方針決定時に、営業担当者をはじめとする関係者が、その案件の事業計画及び施工計画等が人・環境に及ぼす負の影響を確認・評価して、必要に応じてサステナビリティ部門と協議し回避、防止、軽減のための対応を検討することとしています。具体的には、社員や作業員の長時間労働に繋がる可能性が高い工期設定について、適正な工期の確保をお願いする等の対応があげられます。
役職員に対する人権啓発活動
当社では、人権方針や人権デュー・ディリジェンス等人権尊重を含むサステナビリティ課題への取り組みについて解説した研修資料「TAISEI Sustainability Handbook」を作成し、役職員に配付して人権方針等を周知するとともに、部門ごとに説明会を開催する等により浸透を図っています。
また、一人ひとりの役職員が人権方針への理解を深め、人権を尊重した事業活動を実践することができるように、毎年、全役職員を対象としたeラーニングによる研修を行うとともに、社員の階層別・部門別教育体系に人権研修を組み込み、国際的な人権問題や同和問題をはじめ、障がい者、LGBTQ、ハラスメント等様々なテーマで集合研修を実施しています。
更に、各部門に設けた人権侵害の相談窓口となっている担当者を対象とした専門家によるオンライン研修、管理職以上の役職員を対象とした研修用動画視聴によるパワーハラスメントやいじめの防止・事案対応のための研修、新任の人権啓発推進委員を対象とした東京人権啓発企業連絡会主催の人権啓発担当者研修会への参加等、役職員に対する様々なトレーニングを実施しています。
加えて人権尊重のための「人権のしおり」の配付や、人権標語・エッセーを毎年募集し優秀作品を表彰する等、様々な活動により継続して人権啓発に努めています。